1番にゴールしたのに2位になった選手がいたってホント?

おしごと年鑑 未来を生み出す科学技術のお仕事 2021年度
セイコーホールディングス株式会社

世界のスポーツ競技のタイム計測は、より正確に計測できるよう進化しています。スポーツのタイム計測技術について、セイコーホールディングスに教えてもらいました。

  • 時計づくりの仕事
  • 「時」を刻む技術に関わる仕事
  • 電子デバイスを展開する仕事

1960年に行われた国際大会の水泳競技で、タイムの速かった アメリカ選手が、判定で2位になる出来事がありました。

1960年にローマで開催された国際大会での出来事です。水泳・男子100m自由形の決勝戦で、アメリカ代表のラーソン選手とオーストラリア代表のデビット選手は、大接戦の末ほぼ同時にゴールしました。するとこの判定を巡り、歴史に残るこんな悲劇が起こりました。

1960年にローマで開催された国際大会での水泳・男子100m自由形の決勝戦

当時のタイムの計測は、各レーンに配置された3人の計時審判が手動でストップウオッチを使用して計測。同時に、計時審判とは別に6人の着順審判が目視で着順を確認していました。

計時審判のストップウオッチによる判定

計時審判のストップウオッチによる判定は、ラーソン選手が速いという結果になりました。

着順審判の目視による判定

でも着順審判の目視による判定では……
判定結果が真っ二つに割れてしまったのです。

デビット選手の優勝

そのため審判員たちは協議を行い、両選手の記録を同タイムの55秒2とした上で、デビット選手の優勝と決定しました。

ラーソン選手は悔しい思い

この結果に対し、アメリカチームはすぐに国際水連に抗議しました。しかし抗議は聞き入れられず、ラーソン選手は悔しい思いをすることになりました。

正確な計測技術の開発への挑戦が始まった

この出来事は、日本の技術者にも大きなショックを与えました。そして、正確な計測技術の開発への挑戦が始まったのです。

どちらが勝ったのかわからず記録係を見るラーソン選手(左)とデビット選手

ほとんど同時にゴールし、どちらが勝ったのかわからず記録係を見るラーソン選手(左)とデビット選手

矢印

水泳競技の計測技術はこう変わった!

1960年の国際大会の後、計時の電子化と自動化が進みます。4年後に東京で行われた国際大会では、水泳のタイム計測にタッチプレートとプリンティングタイマーが使われ、正確でフェアな判定が行われるようになりました。

タッチプレートとプリンティングタイマーで正確な記録をキャッチ!

タッチプレート

タッチプレート

選手がゴールする際、タッチプレートに触れると機械が反応してタイムを検出する仕組みです。タッチプレートは水圧や水しぶきには反応せず、選手のタッチだけを正確に検出することができます。

プリンティングタイマー

プリンティングタイマー

タッチプレートが検出したデータは、瞬時に電気信号に変換され、プリンティングタイマーに送信し記録されます。

水中とプールサイドのカメラでビデオ判定も可能に!

水中とプールサイドに設置された、ハイスピードのビデオカメラがゴールの瞬間を記録します。選手のタッチが弱すぎるなど、タッチプレートがタッチに反応しなかった場合、このハイスピードカメラで記録したバックアップ画像を再生して、タイムを確定します。

水中に設置されたカメラ

水中に設置されたカメラ

プールサイドに設置されたカメラ

プールサイドに設置されたカメラ

水泳競技だけじゃない

100m走の計測技術もこう変わった!

スタート

公平なスタートが実現!

100m走のスタートはピストルの音を合図にしています。ピストルから遠い選手は音が聞こえづらいなど不利ですが……。

スターティングブロックで、公平なスタートとフライング判定が可能に!

スターティングブロック

スタートの合図音は、スターティングブロックの中に組み込まれているスピーカーから出るようになりました。そのおかげで、どのレーンにいても、公平にスタートの合図音を聞くことができるようになりました。
また、スターティングブロック後方の圧力センサーが、スタート時に加わる足の圧力の変化を検知するので、正確なフライング判定ができるようになりました。

1960年ころの100m走の判定

判定はこう変わった!

1960年ころの100m走の判定は、フィニッシュラインの横に並んだ数人の計時員が、目でゴールを確認し、手動でストップウォッチを押してタイムを計測して、着順を判定していましたが……。

光電管とカメラで、正確なタイムと着順判定が可能に!

フィニッシュラインの両端には、赤外線を出す光電管が設置されています。選手がゴールと同時に赤外線を切ると、その情報が瞬時にトラックサイドクロックに送信され、速報タイムが表示されます。またゴールと同時に、セイコー フォトフィニッシュシステムが、フィニッシュライン上の画像を1秒間に2000枚撮影。その画像によって、正式タイムの判定が行われます。

フィニッシュラインの光電管

フィニッシュラインの光電管

1秒間に2000枚撮影された画像

1秒間に2000枚撮影された画像

ケモノン

水泳のほかにも、たくさんのスポーツ競技の計測技術が進歩して、より正確なタイムが計れるようになったんだケモ!

正確でフェアな計時が支えてくれる

答えてくれた人

セイコーホールディングス 社員アスリート 山縣亮太さん

1960年ころ、タイムは手動のストップウオッチで計られていました。順位とタイムが異なることもあったそうです。その数年後、世界で初めて本格的なクオーツによる計時で、クレームゼロのスポーツ大会を実現したのが僕の会社、セイコーです。
正確でフェアな計時が保証されているからこそ、僕たちアスリートは思いっきり力を出すことができます。僕は、タイムは追うものだと思っています。100分の1秒を縮めるために何年もかかることがあります。タイムを出すための要素を細分化し、課題にしっかり取り組むことが正しい努力だと思います。
タイムが生み出すドラマは、選手一人ひとりにあります。

▼動画も見てね
https://www.seiko.co.jp/the_story_of_seiko_sports_timing/yamagata/

タイムは追うものだ!

答えてくれた人