「水素」は、燃やしても二酸化炭素が出ない、クリーンなエネルギーです。では、水素を自然の中から取り出し、エネルギーとして使うには、どんな方法があるのでしょうか。水素事業に取り組む、INPEXに教えてもらいました。
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天然ガスから取り出して作られる、燃やしても温室効果ガス(二酸化炭素)を出さない、クリーンなエネルギーだよ。
二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすことが世界的な課題になっている。そこで注目されているのが、燃やしてもCO2 を出さない水素エネルギー。「水素をつくって使うまで」を見ていこう。
※水素をつくる方法はいくつかあるが、ここでは、最も一般的な天然ガスから水素を取り出す方法を紹介するよ。
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1天然ガスプラント
地中から天然ガスを取り出す。
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2水素製造工場
天然ガスから水素を取り出す。
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3タンカー
アンモニアも水素も、それぞれの性質にあった専用のタンカーで運ぶ。
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4発電所
水素をそのまま燃やしたり、天然ガスと一緒に燃やして発電する取り組みがある。アンモニアを石炭と一緒に燃やして発電する計画もある。
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5水素ステーション
水素自動車の燃料として水素を供給する。
水素は、石油や天然ガスと一緒に、これからの人類の暮らしを支えるエネルギーになるんだケモ。
ぼく、水素!
Hはぼくの元素記号だよ!
天然ガスを生産する!
天然ガスは地中の奥深くに眠っているので、深い井戸を掘って取り出す。天然ガス(主にメタン)は、炭素と水素からできている。
天然ガス(メタン)
※天然ガスは、メタンが主成分だが、ほかにも、エタンやプロパンなどが含まれている。
天然ガスから水素を取り出す!
炭素と水素からできている天然ガスに、水(水蒸気)を反応させると、水素を取り出すことができる。ただし、このときに二酸化炭素(CO2)もいっしょにできてしまう(下のコラムも見よう)。
ぼくは、天然ガスにたくさん含まれているよ!
上で紹介したように、天然ガスから水素を取り出すときに、CO2ができてしまう。CO2は、地球温暖化の原因になるので、できるだけ空気中に放出したくない。そこで考えられたのが、天然ガスを取り出した隙間に、CO2を埋め戻す方法だ。このCO2を地下に戻す方法を「CCS」、さらに天然ガスを増産する方法を「CCUS」と呼んでいるよ。
天然ガスを取り出した地下の隙間を、再利用するのね!
頭いい〜!
水素をそのまま燃料として使う!
水素をそのまま運び、水素発電や水素自動車の燃料として使うこともある。
ぼくを大量に運ぶ方法も研究されているんだ!
水素をアンモニアに
変えることもできる!
天然ガスから取り出した水素に、高い温度と圧力で窒素を反応させると、アンモニアになる。アンモニアになると、水素のままの時より、簡単にたくさん運ぶことができるよ(下のコラムも見よう)。
水素は液体にすることでタンカーで大量に運べるが、水素が液体になる温度は、マイナス253℃という超低温。これでは、運ぶのに特殊なタンカーが必要になる。そこで考え出されたのが、水素をアンモニアの形に変える方法。アンモニアは、マイナス33℃で液体になるので、グッと運びやすくなる。その上、同じ体積に含まれる水素の量が1.5倍! より効率的に、水素を運ぶことができるんだ。
一石二鳥の方法を考え出したんだね!
アンモニアを燃やして発電!
アンモニアと石炭を混ぜて燃やして発電することもできる。アンモニアは燃やすと(酸素と結合すると)、水と窒素になる。CO2を出さないクリーンなエネルギーだ。
※酸素はふつう2個単位で存在するが、ここでは便宜上3個で説明している。
天然ガスからクリーンな水素を作ることにチャレンジしています!
株式会社INPEX 水素・CCUS事業開発室
事業開発グループ 金子創太さん
INPEXはエネルギーを開発・供給する会社であり、主に石油や天然ガスという形でエネルギーを皆さんに届けています。安定してエネルギーを届けながら、カーボンニュートラル(二酸化炭素等の温室効果ガス排出実質ゼロ)社会の実現に貢献する方法の一つが、クリーンなエネルギーとして注目されている水素の利用です。水素で動く自動車など、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか? 水素は、水素としての姿では地球上にほとんど存在せず、水や天然ガスなどから取り出す必要があります。私たちは長年取り扱ってきた天然ガスを、水素と二酸化炭素に分解し、二酸化炭素は安全に地下に戻して固定することで、クリーンな水素を作ることにチャレンジしています。新しい分野への挑戦、カーボンニュートラル社会実現への貢献をモチベーションとして、チーム一丸となって取り組んでいます。
皆さんに、水素という新しいエネルギーを届けることを想像しながら頑張っています。
期待して待っていてください。