口は、食べ物をかんで味わい、飲み込み、話すといった大切な役割を担っています。歯や口の健康を守る歯科衛生士について全国歯科衛生士教育協議会に聞きました。
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お口のケアで健康な生活を一生涯サポートします。
口と歯のことをどれだけ知っていますか?
むし歯になりやすい人がいる
なりやすさは人それぞれですが、むし歯になりやすい人はいます。口の中のいろいろな状態が重なり、むし歯が生まれます(下の「予防処置」の細菌・歯質・食物のイラストを見てね。3つの円の中央、赤い部分)。
小学生の半数近くにむし歯がある
学校保健統計(令和元年)によると、小学生の44.8%がむし歯の持ち主。さらに、その半数は治療が未完了。
子どもは歯周病にならない
歯周病のうち、歯ぐきが腫れる歯肉炎は子どもにも多く見られます。ケアを怠ると、悪化して歯周炎に進みます。
予防処置
むし歯は下の図に示した3つの要因が重なるとできます。歯科衛生士は、専門的な機械を使って歯垢を除去したり、フッ素などの薬物を塗って歯の質を強化したりして、むし歯の予防処置をします。
原因がわかれば、予防できるね。
保健指導
むし歯を防ぐには、日ごろの習慣が大切です。歯みがきの仕方だけでなく、食べ方などの食育指導も行います。地域内の高齢者施設への訪問活動や保健センターなどの講習会で指導することもあります。
診療の補助
歯科医師の診療がスムーズに進むよう手助けする仕事もあります。歯の健康を守るために、歯科医師とチームで診療に当たります。
あちこちからひっぱりだこの大人気!
歯科衛生士の求人倍率は年々高まっています。歯科クリニックや総合病院のほかに、企業などでも求められており、人数が足りない状況が続いています。
歯科衛生士の1日
町の歯科医院を取材しました。来院する人たちの口の中は、千差万別です。どんなところに注意すればいいか、カルテをチェックし、歯科医師と情報を共有します。
歯垢を長時間放置しておくと、固い歯石に変わってしまい歯ブラシでは落とせません。歯と歯ぐきの境目にある歯石を痛みなくきれいに削り取るのはプロのテクニック!
歯科医師に器具や薬剤を渡したり、患者さんの口に溜まっただ液を吸い取ったり、治療中は片時も目を離せません。歯型を取ることや、歯・口の手術のアシスタントもします。
歯みがきの基本は、歯ブラシの毛先をまっすぐ歯に当てて軽く小さく動かすこと。小さな子どもには「1本1本ていねいに磨こうね」とやさしくアドバイス(保健指導)します。
協力:あだち歯科(千葉県)
なくてはならない、仕事道具はコレ
❶ プローブ:先端に目盛りが付いていて、歯と歯肉の間の溝の深さを測る。 ❷ スケーラー:歯石を除去する。電動式の超音波スケーラーもある。 ❸ PMTC用器具:歯の表面を磨いて汚れを落とす。ヘッドの形状によって、使う場所が異なる。
吐く息やだ液でも検査ができる
むし歯や歯周病のリスクは、唾液検査キット(写真左・机の中央)や口臭測定器(同・右端)でも調べられます。「デントカルトSM検査」(写真右)では、スティックで取っただ液を2日間培養して、口の中の細菌数からむし歯のなりやすさを予測します。
むし歯予防に大活躍 フッ素のすごい力!
細菌によって歯の表面からカルシウムやリンが溶け出しても、フッ素の力で元に戻してくれます。家庭でフッ素入りの歯みがき剤を使うだけでなく、歯科医院で定期的にフッ化物を塗布すると効果的です。
▲マウスピースにフッ化物を入れ、3〜4分間くわえると歯に浸透する
歯と口の健康には、予防が大切です!
歯科衛生士 水野玲菜さん 平山実穂さん
歯や口が健康であってこそ、人はおいしくものを食べられ、楽しくおしゃべりができます。近年の研究では、歯・口腔(口の中のこと)の状態が全身の健康と結びついていることもわかってきました。歯科衛生士は、歯にまつわる病気の予防や口腔の健康づくりをサポートする仕事です。
むし歯や歯周病は生活習慣病と言えます。痛くなってからの治療よりむしろ予防することが大切。正しい歯のお手入れの仕方を伝えるには、専門的な知識だけでなく、コミュニケーション力が必要になります。自分の指導によって患者さんが笑顔になり、「ありがとう」と言ってもらえるとうれしいですね。歯科衛生士は一生活躍できる国家資格であり、やりがいをもって続けられる仕事だと思います。
毎日のケアで歯を大切にしてくださいね。