図書館で本を借りるとき、カウンターで本のバーコードをピッと読み取ってもらいます。最近では、自動貸し出し機や「スマートシェルフ」の導入も進んでいます。簡単に手続きができる仕組みを凸版印刷に教えてもらいました。
電波を使った新技術「RFID」が使われているんだ!
「RFID」という言葉を知っていますか? RFIDとは、製品に電子情報を入力した「ICタグ」を貼り付け、「読み取り機」で読み取り/書き込みを行う仕組みです。身近なところでは、JRの「Suica」や「ICOCA」に代表される交通系ICカードがあります。カードの中にはICチップが埋め込まれており、電波によって接触しなくても情報をやり取りできるのです。
▲JISに制定されたRFIDのマーク
管理システム
読み取り機
ICタグ
ICタグは電池がなくても無線通信するのね。
RFIDの読み取り技術は、ココがすごい!
遠く離れていてもOK!
0.5cmの近さから遠く10m先まで、電波が届く範囲であれば、離れた場所にあるタグも読み取れます。電波にはいくつかの種類があり、それぞれ特性が異なります。
多くても一度でOK!
似た仕組みであるバーコードの場合、商品を一つずつ読み取らなければなりません。RFIDなら、複数のタグを一括で読むことができるので、作業時間を大幅に短縮できます。
バーコードの場合
一つずつ読むので手間がかかる
箱の中でもOK!
電波が通れば、梱包箱に入ったままでも大丈夫。開封せずに情報を読み取れます。バーコードと違って、タグが汚れた状態でも問題ありません。
バーコードの場合
汚れてしまうと読み取れない
「スマートシェルフ」の図書館ならスピード貸し出し
RFID技術を進んで取り入れている場所の一つが図書館です。自動貸し出し機は、本の中に貼り付けられたICタグラベルを読み取っています。予約した本をカウンターでなく、無人で受け取れる 「スマートシェルフ」の導入も始まっています。
棚全体が読み取り機
棚にシート状の読み取り機が内蔵されており、一冊ずつの位置情報がわかります。利用者はセルフでより便利になります。
本の中にICタグ
ICタグラベルは、見えないように本の表紙の内側などに貼り付けられています。
スマートシェルフの利用法
予約コーナーへ
端末に貸し出しカードをかざすと、予約した本の位置を示したレシートが出力されます。
予約専用棚へ
レシートに記載された位置に行き、自分が予約した本を見つけてピックアップします。
貸し出し手続きを行う
自動貸し出し機で手続きをします。もしも貸し出し処理をしていない本が持ち出されたら、ゲートアンテナ(写真右)がアラームを鳴らします。
図書館側は予約貸し出しの手間が減り、本の相談などに時間をかけられるようになるメリットも。
これなら安心!図書館の人は大助かりケモ。
ますます広がるRFIDの活用の場!
今後、無人のお店が増えるかも?
「RFID」は、人とモノが存在する、あらゆる分野で活躍が期待されています。交通システム、倉庫からお店までの物流管理といった従来の分野から、新たにアパレルショップをはじめ、店舗でのセルフ化も進もうとしています。
お店にスマートシェルフが導入されれば、商品の位置や在庫だけでなく、その商品が何回手に取られたかといったデータも蓄積できます。また、賞味期限が近い商品をアラート表示したり、電子棚札でセール品の価格表示を変えたりすることもできます。
電子棚札
▲無線通信で棚の値段表示を変えられる電子棚札。手作業より大幅に省力化される。
ハンガータイプのスマートシェルフ
▲吊り下げ部分にアンテナを内蔵。吊り下げ型の商品の位置や在庫がリアルタイムで識別可能。
モノのインターネット化で、生活がより便利に!
凸版印刷株式会社
DXデザイン事業部 秋葉直樹さん
なぜ、印刷会社である凸版印刷がこうしたRFID事業を展開しているのか疑問でしょうか?
凸版印刷は、120年前、当時の大蔵省印刷局で学んだ技術者たちが独立して創立した企業で、当時から紙幣はもちろん切手など高度な印刷技術が必要な印刷物を扱う会社でした。それらの証券印刷で培った金融系ICカード製造の技術力が、凸版印刷のRFID事業の礎となっています。
近年、世の中のIoT(モノのインターネット)化が進められています。IoTという言葉は元々、RFIDを使ってモノの個数や場所を正確に管理しようとする取り組みの中で、遠隔地にあるRFIDを読み取るために発想されたものです。その後、IoTはデータに基づきあらゆる仕組みの最適化を図るという考えに発展しました。皆さんの生活をより豊かにするために、今後もRFIDはさまざまな分野での活用が期待されています。
RFID技術がどこに使われているか探してみてください。