新しい薬はどうやってつくられるの?

おしごと年鑑 未来を生み出す科学技術のお仕事 2019年度
日本製薬工業協会

病気になるとお世話になる医薬品。みなさんは、医薬品がどのくらい長い時間をかけて、どうやって開発されているのか、知っていますか? 日本製薬工業協会に教えてもらいました。

地道な基礎研究を重ねて、長い時間をかけて作られるよ。

医薬品は長い時間をかけて研究・開発され、公に認められたうえで、発売されます。新しい医薬品が世に出るまでの流れを見ていきましょう。

1 基礎研究(2~3年)

新しい薬が働く作用点(標的)を見つける

まずはじめに、病気のどこに働く薬を目指すかを決めます。この、薬が働く作用点を標的といいます。コンピューターを活用して、標的に作用する薬の構造を予想したりします。

新しい薬が働く作用点(標的)を見つける
矢印

標的に作用する物質を発見する(スクリーニング)

標的を決めたら、それに働く物質を見つけます。これをスクリーニングといいます。たくさんの小さな物質の中から選びます。標的と結合して標的の働きをコントロールする「抗体」と呼ばれる物質なども、薬の候補になります。

標的に作用する物質を発見する(スクリーニング)
矢印

薬のもとになる物質を選ぶ

スクリーニングで得られたいくつかの物質が、本当に薬のもとになるのかを確認します。化学合成を繰り返したり、遺伝子組み換えやバイオ技術を駆使して物質を作り出したりしてはスクリーニングを繰り返し、薬の候補になる物質を選びます。

2 非臨床試験(3~5年)

医薬品の候補として選別された物質の有効性や安全性を、動物や試験のために人工的に育てた細胞を使って確認します。物質が体の中でどんな作用をもたらすのかを調べながら、さまざまな試験を行います。

非臨床試験(3〜5年)

3 臨床試験(3~7年)

非臨床試験を経た医薬品の候補が、人に対して有効で安全なものかどうかを調べます。病院などの医療機関で、あらかじめ同意を得た健康な人や患者さんを対象に、繰り返し試験を行い、データを収集・分析して医薬品として使えるかどうかを調べます。

臨床試験(3〜7年)

4 承認と発売(約1年)

医薬品として有効性・安全性・品質が証明されたあと、厚生労働省に対し承認を得るための申請を行います。さまざまな審査や審議を経て、厚生労働大臣が許可すると、医薬品として製造・販売をすることができます。

承認と発売(約1年)
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一つの薬が発売されるまで、
長いものだと基礎研究から9~16年もの時間がかかるのね!

薬の研究者のおしごと

薬の研究者の仕事の様子を見てみましょう。

朝、出勤すると実験室で実験を始めます。その日に行う研究の内容を確かめて、実験に取りかかります。

朝、出勤すると実験室で実験を始めます。その日に行う研究の内容を確かめて、実験に取りかかります。

実験の合間などに、会議に出席します。薬を作るプロジェクトに関わるさまざまな研究者とコミュニケーションを取りながら、自分の作業を進めます。

実験の合間などに、会議に出席します。薬を作るプロジェクトに関わるさまざまな研究者とコミュニケーションを取りながら、自分の作業を進めます。

実験結果を解析します。実験は、必ず思ったとおりの結果になるとは限りません。でも、失敗も貴重な情報。なぜそうなったのかを調べて、翌日の実験計画を立てます。

実験結果を解析します。実験は、必ず思ったとおりの結果になるとは限りません。でも、失敗も貴重な情報。なぜそうなったのかを調べて、翌日の実験計画を立てます。

この他にも、研究ノートをまとめたり、海外の文献を読んで世界の研究の情報を集めたりします。海外の研究室と共同でプロジェクトを進めることもあるので、語学力も大切ですよ。

この他にも、研究ノートをまとめたり、海外の文献を読んで世界の研究の情報を集めたりします。海外の研究室と共同でプロジェクトを進めることもあるので、語学力も大切ですよ。

製薬会社とお医者さんをつなぐ、MRとは!?

MR(Medical Representatives)とは、製薬会社に所属し、お医者さんや薬剤師さんなど医療に携わる人たちに自分の会社で作った薬の情報を届けたり、実際に使った際の情報を集めたりするのが仕事です。
副作用や効能効果だけでなく、適正な使用方法も伝えます。また、薬が医療の現場で使われた際、それがどんなふうに使われてどんな効果をもたらしたのか聞き取りをして、薬の改良や新しい薬作りに役立てます。薬は正しい情報が伝わらないと、時に予期しない副作用が出てしまう危険性も秘めています。製薬会社と医療従事者の間をつなぎ、正しい情報を伝達するMRは、薬を処方する人にとっても、薬を開発する人にとっても、大切な存在です。

製薬会社とお医者さんをつなぐ、MRとは

試行錯誤の繰り返しが、人を救う薬になります

答えてくれた人

日本製薬工業協会
研究開発委員会委員長 上野裕明さん

かつては命にかかわると言われた病気も、現在はさまざまな薬が開発され、元気になる人が増えています。でも、どんなに科学技術が発達しても、薬が簡単にできるわけではありません。長い時間をかけて試行錯誤を繰り返し、効果と安全性が確認されて、ようやく人々のもとへ届けられるのです。
薬を開発する研究者にも、さまざまな専門家がいます。素材や化学物質の専門家もいれば、さまざまな試験で薬の有効性や安全性を確かめる専門家、そして体の中にどのくらい薬があるかを測定する専門家もいます。こうした人々が自分の得意分野を持ち寄りながら、役に立つ薬を開発しています。みなさんも研究に興味があったら、私たちと一緒に新薬の開発に携わってみませんか? 人類全体の役に立つ、とても目指しがいのある職業ですよ。

実験が好きな人には、
ぴったりの仕事ですね

日本製薬工業協会 研究開発委員会委員長 上野裕明さん