お風呂を沸かしたり、キッチンで料理をしたりと、ガスは暮らしに欠かせないエネルギーです。そんなガスは、どこからどうやって日本に届くのでしょう? 天然ガスを探し出してみんなに届ける仕事をする国際石油開発帝石に教えてもらいました。
地下からガスを採掘し、冷やして液体にして、 日本に届けられるよ。
「天然ガス」とは、地下に眠るガスのこと。日本は、エネルギーの4分の1を天然ガスにたよっています。オーストラリアの沖合にあるイクシスガス田で、天然ガスを生産してから、日本に運んでくるまでを見てみましょう。
オーストラリア
イクシスLNGプロジェクト (イメージ図)
※CPF=Central Processing Facility(沖合生産・処理施設)
FPSO=Floating Production Storage & Offloading(沖合生産・貯油出荷施設)
1 海底の生産井戸
地下数千メートルまで掘られた井戸で、地下から天然ガスを取り出す。
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2 CPF※
地下から取り出した生産物を、ガスとコンデンセート(油の一種)に分ける。
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3 FPSO※
大きな船のような形をした施設。コンデンセート(油の一種)を貯蔵したり、タンカーに移して出荷したりする。
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4 パイプライン
天然ガスは、海底のパイプを通って、遠く離れた陸の工場まで運ばれる。
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5 液化基地
天然ガスから、不純物を取り除き、冷却して液体にする。
秘密 ❶
海上施設はこんなに巨大!
「CPF」の高さは210m、「FPSO」の高さは140mもあります。さらに、「FPSO」の長さ(336m)は、東京タワーの高さ(333m)とほぼ同じです。陸から遠く離れた海上に建設されるので、激しい台風にも耐えられるよう、がんじょうに設計されています。
FPSOの長さは東京タワー
の高さとほぼ同じ
海の上にこんな大きな施設があるなんて!
秘密 ❷
海底パイプの長さは、なんと890㎞!
天然ガスは、海上施設から陸にある液化基地まで、海底のパイプを通って輸送されます。これを、「パイプライン」といいます。イクシスのパイプラインは、なんと約890㎞もの長さ!この距離は、東京から福岡までとほぼ同じです。
天然ガスが通るパイプを海底に沈めているところ。パイプの直径は約1メートルもある。
東京から福岡
までの距離と
ほぼ同じ!
秘密 ❸
ガスを冷やせばグッと小さくなる!
気体のガスを遠い日本まで運ぶのはたいへんです。そこで、天然ガスをマイナス162℃以下に冷やして液体にします。液体にすることで、体積は気体だったときの600分の1に小さくなります。この液体になった天然ガスを「LNG」(「liquefied natural gas=液化天然ガス」の略)と呼びます。
気体→液体で、体積は600分の1
秘密 ❹
超低温のまま液体のガスを運べる!
冷やして液体にした天然ガスは、温まるとまた気体に戻ってしまいます。そこで、LNGを低温のまま運べる専用タンカーの出番です。このタンカーは、魔法瓶のように熱を逃がさないつくりになっています。それでも気体に戻ってしまったガスは、船の燃料としてムダなく利用されます。
タンカー断面図
まるで魔法瓶!
天然ガスが、みんなのもとへ!
日本に到着したLNGは、液体から気体に戻され、安全に使えるように加工して、みんなの家に届けられます。
日本
天然ガスは、こんなところで使われている!
火力発電の燃料
都市ガス
ガスボンベ
きみの家でお風呂を沸かしているガスも、オーストラリアから届いたのかも!
天然ガスは、二酸化
炭素の排出が少ない
クリーンなエネルギ
ーなんだケモ
地球の恵みである天然ガスを、世の中のためのエネルギーに!
国際石油開発帝石株式会社 イクシス事業本部
技術ユニット 大木良介さん
わたしは、約2千人が関わるイクシスLNGプロジェクトがうまくいくよう、全体をサポートする仕事をしています。このプロジェクトは、約20年の年月をかけて開発され、2018年に生産を開始しました。今後40年間もの長いあいだ、生産が続きます。先輩たちの努力に感謝し、しっかりとバトンを引き継ぎたいと思っています。
わたし自身は、子どもの頃から科学が好きで、学生時代は地熱の研究をしていました。今の仕事は、地下の状態を想像することが大事なので、その勉強が役に立っています。地球の恵みである天然ガスを、世の中で活用できるエネルギーとして地下から取り出し人々に届ける仕事に、やりがいを感じています。
好奇心は、どんな仕事にも役に立つよ! 「もっと知りたい」という気持ちを大切にして自分で調べてみよう!
▲イクシスの液化基地で仲間たちと。左から2番目が大木さん。