クジラは1年間でどれだけエサを食べる?

おしごと年鑑 「知る」「学ぶ」「楽しむ」をかなえるお仕事 2019年度
一般社団法人日本鯨類研究所

海の生き物の中で、もっとも大きな動物はクジラです。クジラは、巨大な体を支えるために何をどのくらい食べているのでしょう? クジラについてのいろいろを、日本鯨類研究所に教えてもらったよ。

1年間に世界中でクジラが食べるエサの量は、3億~5億トンです。

クジラは体が大きいからたくさん食べる

胃の中

ニタリクジラの胃の中には、カタクチイワシがびっしり詰まっていました

クジラは種類によって大きさがちがいます。一番大きいのはシロナガスクジラで、体長約30m、体重は100トン以上あります。逆に一番小さいクジラはイルカの仲間で、体長1.5mのコガシラネズミイルカです。南極海のクロミンククジラは、大きな体を維持するため、1日に自分の体重の3~4%の量のエサを食べています。

1年間でクジラと人間の魚を取る量くらべ

魚を取る量

クジラはどんなエサを食べるの

海の中に生息する生き物は、小さなプランクトンが魚に食べられ、その魚をもっと大きなクジラが食べる、食物連鎖の関係にあります。もしこれらのどれかが増えすぎたり減りすぎたりすると、海の生態系はバランスを崩してしまいます。
クジラのエサになる魚は、わたしたち人間もよく食べます。人間が魚を取りすぎるとクジラは困ります。またクジラが増えすぎると、魚が減って漁業ができなくなり漁師さんが困ります。それだけではなく、海の生態系も崩れ、海の中に生息するすべての生き物が困ることになるのです。

海の食物連鎖
ユイ

クジラはわたしたちと同じ魚を食べているのね

海の生態系を守る!

海の中に生息する生き物は、わたしたちにとってどれも貴重な資源です。海の生態系は、食物連鎖のバランスを保つことで守られます。食物連鎖の頂点にいるクジラは、季節や場所によって異なる、さまざまな海の生き物をエサにしています。そこで、わたしたちの研究所では、クジラの調査を通して海の生態系を解明し、クジラを減らすことなく利用できる状態でいることを目指しています。

くじら調査
クジラの目

クジラの目

目玉の水晶体 から 年齢がわかる!

耳アカ

耳アカ

耳アカの年輪 から 年齢がわかる!

脂皮の厚み計測

脂皮の厚み計測

脂皮の厚み から 栄養状態がわかる!

体重計測

体重計測

体長や体重、性別、子どもがいるかなど がわかる!

クジラの歯

クジラの歯

歯のあるクジラは、 歯に刻まれた年輪 から 年齢 がわかる!

採血

採血

血液に含まれる成分 から クジラの健康状態 がわかる!

胃の内容物を調査

胃の内容物を調査

胃の内容物 から 食べたエサの種類と量 がわかる!

クジラの調査や研究は、大小の調査船でクジラのいる海域に行って行われています。
調査の方法は、双眼鏡などを使って、目で見て種類や数を調べる方法と、クジラを捕まえて体長や体重を測ったり、体の中の様子を調べたりする方法があります。

調査母船

調査母船

船上にクジラを引きあげ、さまざまな調査を行います

目視調査

目視調査

泳いでいるクジラを見て、種類や数を調査します

クジラを捕獲調査するお仕事とは?

答えてくれた人

一般財団法人 日本鯨類研究所
研究者 坂東武治さん

昔から、日本を含む多くの国で、クジラは貴重な水産資源として利用されてきました。その大切な資源を、これからも持続的に利用するために、クジラの数や年齢構成などを調べることが、私たち日本鯨類研究所の仕事です。
クジラの調査は、北太平洋や南極海で、数カ月間にわたって行われます。目視調査をしてクジラの数を調べたり、捕獲したクジラから、上の写真のように年齢や成長の様子を調べたりします。この仕事を目指すなら、クジラに興味を持ち続けることがとても大切です。ホエールウォッチングや調査ボランティアなどにも、積極的に参加してみて下さい。

坂東さん