人力車の引き手 のしごと

2025.01.09 紹介します○○のしごと

株式会社ライズアップ所属の人力車の引き手、大利弥里さん
「人力車を通して浅草の魅力も伝えていきたいです」と話す大利弥里さん=2024年9月、東京都台東区
株式会社ライズアップ所属の人力車の引き手、大利弥里さん

大利弥里さん

株式会社ライズアップ(東京都台東区)所属

おもてなしの心で街をかける

東京・浅草など有名な観光地で目にすることがある人力車。客を乗せて引きながら名所をめぐるのが、引き手と呼ばれる人たちの仕事です。大利さんは浅草を中心に人力車を引き、観光客を楽しませています。

人力車には2つの車輪が付いていて、車輪を結んだ軸の上に座席があります。座席の足元の方からのびた2本の長い柄を引くと前に進みます。

定員は一般的に大人2人で、計250キロまで乗れます。50キロの大人が2人乗ったとすると、計100キロ。人力車自体の重さと合わせると200キロ近くになります。これは小さめのアップライトピアノ1台分ぐらいの重さです。

体力がある若い男性が多いとされる仕事ですが、「何度も練習してコツがわかれば、女性も立派に務められます」。大利さんもコツをつかむまで、営業時間の前後に特訓をくり返しました。上体を前かがみにしてななめ下に引くようにすると、進みやすいそうです。大利さんの会社では、約30人の女性の引き手が活躍しています。大利さんは客の希望で1日に最長計9時間引いたこともあるそうです。

「これからも人力車を多くの人に体験してもらい、浅草の街を盛り上げていきたいです」

あゆみ

1993年
埼玉県生まれ
小学校時代
水泳やバレエを習っていました。将来の夢は女優でした
中学校時代
テニス部で汗を流しました
高校時代
埼玉県立南稜高校に進学。全国トップクラスの成績をほこるバトントワリング部で活躍しました。
2012年
子どもが好きだったので、保育士の資格が取れる淑徳短期大学(現・淑徳大学)のこども学科に進学しました
2014年
小学生の時の夢に挑戦しようと、芸能事務所のオーディションを受けて合格。テレビ番組などに出演しました
2018年
保育士として働きました
2019年
海外に一定期間滞在できるワーキングホリデー制度を使って、オーストラリアで働きました
2020年
現在の会社「ライズアップ」に入社
やりがいや苦労

お客さんを喜ばせつつ安全運転

「最も大切にしているのは、安全運転とおもてなしの心です」と話す大利さん。交通事故に気をつけながら車を引く一方で、客の話を聞いたり、ガイド役を務めたりします。運転と客のどちらにも気を配るのは大変ですが、「お客さんを喜ばせたい一心でがんばっています」。

そうした心がけが客に伝わり、「また人力車に乗りたい」と言ってもらえることがやりがいです。実際に何度も乗ってくれたり、海外から予約して来てくれたりする人もいるそうです。

「手をふってくれたり、声をかけてくれたりする街の人たちからも力をもらっています」

向いている人は?

所属する会社では、引き手になるためには実技や筆記の研修を経て、両方の試験に合格する必要があります。合格するのは簡単ではなく、研修中にやめてしまう人もいます。合格するまで前向きにがんばれる人は、自分よりも、目の前の相手のために何かをしたい、と思える人だと思います。だれかを喜ばせたいというおもてなしの心がある人なら、きっとうまくいきます。とにかく「お客さまファースト」の仕事です。

必要な道具は?

お客さんをお寺や神社に連れていくことも多く、特に外国人観光客たちにはお参りの作法を伝えます。手水で洗った後、ぬれた手をふけるように常に手ぬぐいを5、6枚用意しています。

株式会社ライズアップ所属の人力車の引き手、大利弥里さんの仕事道具。お寺や神社での作法に必要な手ぬぐいを5、6枚用意している

おしごとあるある

人力車は道路交通法で、自転車などと同じ「軽車両」と定められています。車道の左はしを走るなどのルールを守り、危険を予測しながら走ります。社内で「1に安全、2に安全、3に安全、4に安全」と言われるほど、安全を大切にしています。出発する引き手にかける言葉は「安全運転、いってらっしゃい」。かけられたほうは「安全運転、いってきます」と答えます。みんなで写真を撮る時のかけ声も「安全運転、いってきます」です。

2024.11.4付 朝日小学生新聞
構成・浴野朝香

毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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