田中弥生さん
会計検査院長(検査官)国のお金の使われ方 調べ、正す
会計検査院は、国民の税金や国の借金「国債」で集めたお金が正しく使われ、効果を上げているかをチェックします。田中さんは会計検査院のトップ、院長として働いています。
会計検査院は書類やデータを調べるだけでなく、国のお金が使われた現場を見に行きます。厳しくチェックすることで不正を見つけ、効果が上がるようにアドバイスもします。
そのため、会計検査院はほかの組織から独立して活動ができることが憲法(90条)や法律で定められています。相手に資料を出すように求めたり、調べた結果を国民や国会に知らせたりすることができます。
「国のお金が使われたあらゆるものを調べます。例外はありません」と田中さん。国の府・省庁のほか、国会や裁判所、国がつくった団体、さらに国が補助金をわたした地方自治体、会社もチェックします。
会計検査院の組織には二つの柱があります。一つが調査官と呼ばれる人たちなどがいる「事務総局」。もう一つが事務総局の司令塔となり、組織全体の考えを決める「検査官会議」です。
検査官会議には3人の検査官がいます。田中さんは院長であると同時に検査官の1人で、検査官会議の議長もかねています。
- 1960年
- 東京都生まれ
- 小学校時代
- インドア派でした。ミヒャエル・エンデの『モモ』などの文学が好きでした
- 中学校時代
- バドミントン部に入って、練習に明けくれました
- 高校時代
- 東京都立立川高校に進学しました。ピアノやチェンバロの練習に熱中しました。その一方で、校内の応援団でチアガールとしても活動しました
- 大学時代
- 上智大学に進学。家にあった学会の雑誌で関心を持ち、心理学科を選びました
- 社会人時代
- いろいろな会社や組織を経験するとともに、社会人になってからも慶応大学や大阪大学の大学院で学びました。研究活動のほか、企業の社外取締役なども務めました
- 2019年
- 国会の同意と内閣の任命、天皇の認証を受け、会計検査院検査官に就任。2024年1月、女性で2人目となる会計検査院長になりました
「社会をよりよく」を原動力に
会計検査院の仕事は「物事を正しく判断し、問題を発見する力が問われる」と田中さん。
相手に「まちがっていませんか」と確認するのが仕事です。いやがられることもありますが、「国や社会をよくしたい」との気持ちを原動力に働きます。
税金の徴収もれがないか、計画通りの道路がつくられたか。最近は、新型コロナウイルス感染症の対策で使われた国の予算の全体像を明らかにしました。
田中さんは会計検査院の仕事について「責任や任務は重いですが、国の大切なお金の使い方を監督するところに大きなやりがいがあります」と語ります。
なるためには?
会計検査院 人事課 調査官
古橋俊平太さん
会計検査院で働くには国家公務員採用試験に合格する必要があります。その後、面接による選考を経て職員となります。研修や試験を重ね、経験を積んだ人が調査官になります。職員約1200人のうち、調査官は700人ほどです。
向いている人は?
国のお金の使われ方をチェックするのが私たちの仕事です。さまざまな物事への強い好奇心や、問題点や改善点を見つけだせる「考える力」が欠かせません。
自分の世界に閉じこもることなく、多くの人たちと交流し、いろんなことを学び、経験して視野を広げてください。
また、現場では多くの人から話を聞きます。相手が話をしたくなるような「聞く力」や、どんな時もいばらず相手の人を思いやる心構えも大事です。(古橋さん)
必要な道具は?
出張に使うスーツケースが欠かせません。いろいろな現場を自分の目で確認しに行くため、国内はもちろん、時には海外にも足を運びます。多い人は出張が年間70日にも上ります。(古橋さん)
2024.7.15付 朝日小学生新聞
構成・中尾浩之
毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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