スポーツ理学療法士 のしごと

2024.02.27 紹介します○○のしごと

スポーツ理学療法士の藤堂愛さん
(上の写真)選手の体にふれて筋肉や骨のようすをみる藤堂愛さん。「結果が出て喜んでいる選手を見るときが、一番やりがいを感じる」といいます=2023年9月23日、東京都北区
(下の写真)パラスポーツの一つゴールボール。ボールを全身で受け止めてゴールを守ります ©朝日新聞社
スポーツ理学療法士の藤堂愛さん

藤堂愛さん

横浜市スポーツ医科学センターリハビリテーション科(神奈川県)ゴールボール日本代表主任トレーナー

息の長いプレー 支えるケアを

理学療法士は、病気やけがで動きづらくなった体を元にもどす専門家です。特にアスリートのけがの予防や回復を助けるのが、スポーツ理学療法士です。

藤堂愛さんはゴールボール日本代表チームのトレーナーも務め、さらにコーチの役割も担っています。「動きを体のつくりから説明するので選手が理解しやすい。けがへの対応もできるため、この資格を持つトレーナーが求められるようになっている」と言います。

ゴールボールは目に障がいのある選手が競うパラスポーツの一つです。鈴の入ったボールでゴールをねらい、相手側は全身でボールを受け止め、守ります。

チームの合宿では、選手に体の状態を聞くことから始め、ひじやひざなどにテーピングをします。練習中は動きに目を光らせ、「体がキレてない」選手には声をかけます。「無理して大きなけがにつながったらどうする? いま休めば早く回復できるのに」

練習後は、選手の筋肉や骨の状態を手でふれて確認し、ケアをします。同じ姿勢や動作が続くと、筋肉が固まって関節の位置がずれてしまいます。手や電気を通して整えたり必要な動きを加えたりして、翌日また十分に力が出せるようにします。

あゆみ

1991年
北海道生まれ
小学校時代
体を動かすのが好きでしたが、親には「けがの星の下に生まれた」と言われていました。おかげで理学療法士を知り、めざすようになりました
中学校時代
バスケットボール部に入部。人一倍練習するようすを先輩が見ていて、1年からレギュラーに。「努力は実を結ぶ」を実感しました
高校時代
地元の文武両道の高校でバスケを続けました。ひざの手術でプレーできない間、声を出したりドリンクを作ったりして選手をサポートする大切さを感じました。3年ではキャプテンを務めますが、けがで最後の試合はわずかしか出られませんでした
大学時代
北海道文教大学人間科学部(現・医療保健科学部)へ進学。けがを防ぐ基礎知識の大切さを感じました
社会人時代
道内のスポーツ医学専門の病院に就職。先輩の紹介で現在の職場へ
やりがいや苦労

結果も「休む勇気」も大切だから

藤堂さんは中高時代、無理に無理を重ねて運動を続け、「何でもっと早く治療に来なかったの」とおこられたことがあります。「選手には休む勇気を持って長くプレーを続けてほしい。経験者の私が言うからこそ説得力がある」

この大会までに治したい、結果を出したい、という患者さんの思いに責任を感じると言います。一方、「結果が出て喜んでいる選手を見るのが一番うれしい」。

治療をしてずっとたってから、「大会でいい結果が残せました」というお礼の手紙をもらったこともあるそうです。

なるためには?

理学療法士は国家資格です。大学や専門学校などで3年以上、専門知識を学んだり実習をしたりしたうえで、国家試験を受けます。病院や介護施設などで主に働きます。

藤堂さんは「早くに理学療法士という目標を持ててよかったです。目標は途中で変わってもいいと思いますが、ギリギリで決めるのではなく、ずっとめざしてきたことのほうが簡単にあきらめない気持ちになります」と話しています。

必要な道具は?

チームの合宿や試合のときに持っていくトレーナーバッグ。さまざまな種類のテーピングテープ、痛み止め、消毒薬のほか、歯が折れたときに使う薬も入っています。

スポーツ理学療法士の藤堂愛さんが仕事で必要な道具の画像

おしごとあるある

生活の中であらゆる動きが気になってしまうそうです。前の人の歩き方を見ると「きっとここが悪いんだろうなぁ」「その歩き方はここを痛めそう」「あのリハビリをやると治りそう」……。

日常の会話でもつい関節や筋肉の名前、動きの表現などの専門用語を使ってしまい、「何のこと?」と言われることも。言葉の説明から会話がふくらみ、「勉強になった」と言われるので、悪いことではないなと思っています。

2023.11.6付 朝日小学生新聞
構成・中田美和子

毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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