佐藤恵さん
埼玉県スクールカウンセラー笑顔を支える「心の専門家」
学校生活の中で、スクールカウンセラー(SC)を見かけたり話したりしたことがあるかもしれません。埼玉県の中学・高校でSCとして働く佐藤恵さんは「すべての子どもたちが笑顔で毎日を送れるように、心の専門家として支える仕事」だと話します。
公認心理師と臨床心理士の資格を持つ佐藤さんは、二つの中学校と埼玉県内の高校、専門学校のSCを務めています。自治体によって働き方はちがいますが、多くの場合、複数の学校を受け持ち、曜日などによってそれぞれの学校を回ります。
不登校やいじめなど、学校生活でこまりごとをかかえた子どもは少なくありません。対話をしながら、解決方法をいっしょに考えます。
SCは、なやみを持つ子どもと1対1で話していることが多いイメージがあるかもしれません。けれども実際は、多くの人とのチームワークが欠かせない仕事です。先生や家庭、福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーなどと、たくさん話し合います。病院など学校外の施設を利用している場合は、医師や心理士とも協力します。
「チームで動く中で『心の専門家』としてやるべきことを意識しています」
- 1984年
-
埼玉県生まれ
- 小学校時代
- 読書が大好きで、朝小読者でした。5年生のときに学級崩壊があり、人はどうして攻撃したり、同じ人に対して好ききらいがあったりするのかなど、心理に興味を持ちました
- 中学・高校時代
- 埼玉県の公立中学に進学。父親の仕事で神戸市へ引っ越すことになり、高校受験をめぐって中学の先生たちに助けられました。「いつか学校に関わる仕事をして、恩返しがしたい」と思うように。神戸市の県立高校に進学
- 大学時代
- 千葉大学文学部で心理学を学びました。個別指導塾のアルバイトをきっかけに、一人ひとりの子どもと向き合う仕事がしたいと思いました。早稲田大学大学院の人間科学研究科へ
- 現在
- 臨床心理士の資格を取りSCに。公認心理師の資格も取得
「これから」のなやみの対処法も
一番うれしいのは、こまりごとをかかえていた子どもが、元気に笑って登校できるようになるのを見ることです。「SCは、先生のように毎日・長時間、一つの学校にいることはできません。しかし、時間がかぎられているからこそ、問題を客観的に見ることもできます」
今こまりごとをかかえている子どもたちだけではなく、すべての子どもが、ストレスやなやみと上手につき合っていくための「ストレスマネジメント」を教えるのもSCの仕事です。「生徒たちが社会に出る前に、ストレスマネジメントを学ぶ機会をより増やしたいです」
おしごとあるある
たくさんの人のこまりごとを聞き、向き合うので「ストレスがたまるのでは?」と心配されることがあります。仕事で聞いた話は秘密にしなければならないので、だれかにぐちを言うわけにもいきません。
自分自身のストレスに気づいて、きちんと対処することを「コーピング」といいます。心理の仕事をしている人の多くは自分なりのコーピングのやり方を持っています。
必要な道具は?
SCの仕事に直接必要なわけではありませんが、テニス道具です。私の「コーピング」の方法は寝ること、食べること、問題を解決する方法を考えること、そしてテニスをすることだからです(写真は本人提供)。
向いている人は?
チームワークが重要な仕事なので、いろいろな立場の人とコミュニケーションをとるのが得意な人。自分の心や体の健康管理がしっかりできることも大切です。子どもが好きであることも。
うまくいったことはもちろん、失敗やつらかったことも、相手の話を聞くときに役に立ちます。今やっていることに真剣に取り組み、まわりの人との関係を大切にして、たくさんの経験を積んでください。
2023.9.18付 朝日小学生新聞
構成・奥苑貴世
毎週月曜連載中の「教えて! 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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