ピアノ調律師 のしごと

2023.11.24 紹介します○○のしごと

ベヒシュタイン・ジャパン(東京都世田谷区)のピアノ調律師、野中絵里さんの画像
「ベヒシュタインのピアノの響きや音色のすばらしさを多くの人に味わってもらいたい」と話す野中絵里さん=東京都千代田区
ベヒシュタイン・ジャパン(東京都世田谷区)のピアノ調律師、野中絵里さんの画像

野中絵里さん

ベヒシュタイン・ジャパン(東京都世田谷区)

ひく人が求める音色を

ピアノには88鍵の鍵盤があります。鍵盤をたたくと、先にあるハンマーが弦を打ち、音が出ます。その音の高さを正しく合わせ、鍵盤のタッチや音色を調えるのがピアノ調律師の主な仕事です。最終的に演奏する人の好みに合うように仕上げます。

ピアノの大部分は木材でつくられています。木材は温度や湿度の変化でふくらんだり、縮んだりをくり返します。そのため、音の高さがくるったり、タッチが変化したりするのです。

そこで、チューニングハンマーと呼ばれる道具で弦をしめたりゆるめたりしながら、音程を調えます。自身の耳を頼りに音だけに集中し、一音一音をきれいに合わせます。オクターブが合っているか、和音がおかしくないか、といったことも確認します。

コンサートやレコーディングでは、ピアノ演奏者が求めるタッチや音色、響きに近づけることも求められます。演奏者がイメージする世界をくわしく聞き取り、やわらかくしたり、ダイナミックにしたりと、細やかな技術で対応します。

ていねいな対応と確かな技術で評価が高い野中さんは、演奏者から調律や調整をたのまれることが多く、海外に出張して作業することもあります。

あゆみ

1976年
栃木県生まれ
小学校時代
音楽が好きで、学校のクラブ活動ではブラスバンドに所属し、トロンボーンを担当していました。地域の少年少女合唱団にも入っていました。母親に連れられ、よくコンサートに出かけていました
中学校時代
吹奏楽部に入部。ジャズが好きな母親にすすめられたこともあり、木管楽器のサクソフォンを担当しました。勉強は苦手で、毎日部活のためだけに学校に通っていたといいます
高校時代
ファッションに興味があり服を自分で作ってみたいという思いから服飾科に進学。音楽も変わらず好きで、市民吹奏楽団でサクソフォンを続けました
現在
専門学校のピアノ調律科で学んだ後、楽器店勤務を経て、ユーロピアノ(現ベヒシュタイン・ジャパン)に入社。ドイツなどでの技術研修を経て、技術部に配属。家庭や音楽教室、コンサートホール、アーティストのレコーディングなどでの調律を担当しています
やりがいや苦労

最高の演奏を手助け

コンサートでは演奏者によって求めるものがちがいます。それを表現する方法も一人ひとりちがうため、わかるまで話をよく聞くことが大切です。

リハーサルにも立ち会い、客席で演奏を聞きます。その状態次第でピアノの位置を動かしたり、向きを変えたりと、細かい気配りも欠かしません。

限られた時間内で要望にこたえるのは大変ですが、いつも演奏者の思いを最大限に反映したいと考えています。神経を使いますが、「このピアノで最高のパフォーマンスができました」と言ってくれる演奏者が多く、やりがいにつながっています。

なるためには?

学歴や資格は必ず必要というわけではありませんが、ほとんどの人が専門学校や音楽大学の調律科などで知識や技術を学んでいます。就職してからも学びは欠かせません。ピアノを深く理解するために技術を磨くことはもちろんですが、ピアノや音楽は宗教や文化と密接につながっていることを知ることが大切です。ピアノに大きな影響を及ぼした過去の出来事や芸術家に関する本を読んでおくことは、とても役立つと思います。

必要な道具は?

チューニングハンマー(左手前)など調律や調整に欠かせない道具。スーツケースに入れて持ち歩いています。そのままでは使いづらいものもあり、自分なりに改良をくり返しています。

ベヒシュタイン・ジャパン(東京都世田谷区)のピアノ調律師、野中絵里さんが仕事で必要なチューニングハンマーなどの道具の画像

向いている人は?

ベヒシュタイン・ジャパン(東京都世田谷区)の広報企画室室長、鈴木英二さんの画像
      ベヒシュタイン・ジャパン 広報企画室室長 鈴木英二さん

「まずはピアノに限らず楽器が好きで、心から音楽を楽しめること。技術を磨く努力を続けることができ、古い物を大切に使い続ける心づかいがある人が求められます」(鈴木さん)

2023.10.2付 朝日小学生新聞
構成・浴野朝香

毎週月曜連載中の「教えて! 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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