近藤仁美さん
国際クイズ連盟日本支部長出題通じて参加者を笑顔に
クイズ作家は、テレビ番組や新聞、イベントなどで出されるクイズの問題をつくる仕事です。近藤さんは、「クイズはあくまで手段で、目的は楽しんでもらうこと。人とコミュニケーションをとるための方法の一つ」といいます。
仕事で大変なことは、答えが一つにしぼられる問題かどうか、本当にこの答えで正しいのか、といった事実をていねいに確認する作業です。不確かなことはどれだけおもしろい情報でも、使わないようにしています。「時間をかけて調べたので、なんとか形にならないかなと考えるものもありますが、使わないという勇気を持つことも大事」。それが信頼につながります。
つくった問題が使えずにがっかりすることもありますが、新しい情報を探して気をまぎらわしたり、おいしいものを食べたりして気持ちを切りかえています。
幼いころから、「なんでだろう」と疑問に思ったことは自分でよく調べていたという近藤さん。学校での勉強も、教科にとらわれず、学んだことを結びつけながら考えていました。そんな習慣が「今の仕事にも通じているかも」と話します。
中高生のときに得意だった教科だけでなく、苦手だった教科も、今は仕事の武器になっています。
- 1988年
-
三重県生まれ
- 小学校時代
- 木登りをしたり、本を読んだりすることが好きでした
- 中学校時代
- 私立の中高一貫校に進学。友だちにさそわれて剣道部に入部。学級委員長や生徒会役員などをしました
- 高校時代
- 苦手意識のあった数学と英語に一生けんめいに取り組みました。幼いころから好きだった文学と、新たに関心を持った教育や法律に関わる仕事をしたいと思っていました
- 大学時代
- 早稲田大学教育学部国語国文学科に入学。大学まで道案内してくれた先輩にさそわれ、クイズ研究会に入りました。イベントやアルバイトでクイズをつくるうちに仕事になりました
- 現在
- 「高校生クイズ」や「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」などの問題を手がけています。かつて苦手だった英語や数学が、今では武器になりました
もっと知りたくなる工夫を
問題づくりは「相手のことを考えること」が第一。解答者や見ている人に「もっと知りたい!」と思ってもらえるよう心がけています。例えば、「エベレストの高さは何メートル?と聞くよりも、エベレストは富士山何個分?と聞くと興味を持ってもらいやすいです」
答えを知らなくても考えたらわかるように工夫しています。だれも答えられないような難しい問題だと、「だれからの反応もない、キャッチボールが成立しないものになってしまいます」と近藤さん。クイズを楽しんでくれている人の笑顔が仕事のやりがいです。
なるためには?
クイズ作家は、いろいろなことを知っている必要があります。近藤さんは年間300冊ほどの本を読むそうです。また、1日につくるクイズは多いときで70問ほど。知っていることを表現できる力も必要です。いろいろなことに関心を持ち、「どんどんクイズにしてみて」といいます。
そしてクイズをつくったら、ぜひ発表してみてください。「最近は、SNSで発信していた内容が注目されて、そのまま本になるという可能性もあります」
必要な道具は?
予定やメモを書きとめるためのスケジュール帳と万年筆。くわしい情報を得たり、事実の確認をしたりするために、さまざまな種類の本は欠かせません。
おしごとあるある
クイズ番組の正解判定のことを、業界用語では「ピンブー」とよびます。正解音の「ピンポン」と不正解音の「ブー」に由来していて、テレビ局によっては「ブーピロ」とよぶこともあります。
クイズ番組の正解判定は、作家自ら現場で行うことも多く、近藤さんが正解判定の音を鳴らしていることもあるのだとか。「大きな賞金がかかっていたり、優勝が決まったりする瞬間の判定では、手が震えてしまう」といいます。
2023.5.29付 朝日小学生新聞
構成・小川しおり
毎週月曜連載中の「教えて! 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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