納棺師 のしごと

2023.07.03 紹介します○○のしごと

ディパーチャーズ・ジャパンの納棺師、菊地優汰さんの画像
スタッフをモデルに、メイクを実演する菊地さん=東京都中央区のディパーチャーズ・ジャパン株式会社
ディパーチャーズ・ジャパンの納棺師、菊地優汰さんの

菊地優汰さん

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社(東京都中央区)

旅立つ故人の姿を整える

納棺師とは、故人(亡くなった人)の表情や身だしなみを整えてひつぎにおさめる「納棺」を仕事にする人のことです。専門的に学ぶ必要がありますが、公的な資格はありません。納棺の専門会社や葬儀会社などで働くのが一般的です。

菊地さんは、納棺師が納棺から葬儀まで行うサービスを提供するディパーチャーズ・ジャパン株式会社で働いています。1日に平均2~3件の納棺を担当します。

納棺にかかる時間は1時間ほど。菊地さんの仕事を残された家族が見守ります。まず、故人の体をきれいに洗います。お気に入りだった服などに着がえさせ、顔をそってメイクをします。傷あとがあればファンデーションなどでカバーし、家族に確認しながら生きていた時の姿に近づけていきます。

「納棺や葬儀は暗いイメージかもしれませんが、実は心温まるシーンも多い」と菊地さん。メイク中に「そうそう、お父さんって立派な顔立ちだったよね」と笑みがこぼれ、思い出話に花が咲くこともあるそうです。「納棺は、葬儀などで忙しくなるご家族が故人様とゆっくりお別れできる時間。今後もご家族に寄り添い、よい別れをサポートできる納棺師でありたいです」

ディパーチャーズ・ジャパンの納棺師、菊地優汰さんのおしごとの漫画

あゆみ

子どものころの夢は警察官。4年生の時にはじめた野球に夢中になり、中学校でも野球に打ち込みました。地元の工業高校を卒業後は、金属のプレス加工をする製造業の会社に入社。機械を操作して製品を製造するマシンオペレーターとして働きました。お客さんから、感謝の言葉を直接聞ける仕事に就きたいと思うようになり、納棺師を養成する学校「おくりびとアカデミー」に入学。納棺の技術や心のケアなどを学び、半年後にディパーチャーズ・ジャパン株式会社に入社しました。

1995年
福島県生まれ
2008年
公立の中学校に進学
2011年
公立の工業高校に進学。機械システム科で学ぶ
2014年
金属プレス加工をする製造業の会社に入社
2020年
製造業の会社を退社し、納棺師を養成する学校「おくりびとアカデミー」に入学
2020年
ディパーチャーズ・ジャパン株式会社に入社
やりがいや苦労

悲しむ遺族が明るい表情に

最初は悲しみに沈んでいた家族が、納棺式が終わるころに明るい表情に変化するのを見ると、やりがいを感じるそうです。「こんなにきれいにしてくれてありがとうと言われると、やっぱりうれしい。おひつぎに納められた故人様を見て初めて、死を現実と受け止められたと話す人もいます」

小さな子どもの場合はもっと正直な反応があります。最初は故人に近づくのを怖がっていた子も、記憶の中の姿に近づいてくると自分から触りにいくそうです。「ご遺体の状態やご家族の望みはさまざま。臨機応変に対応できるように、学び続けたいです」

クローズアップ
ディパーチャーズ・ジャパンの納棺師、菊地優汰さんの仕事道具の画像
納棺バッグ。納棺師の仕事に必要なメイク用品などの道具がつまっています

2022.8.1付 朝日小学生新聞
構成・戸井田紗耶香
イラスト・たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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