原田慶太楼さん
東京交響楽団 正指揮者動き・雰囲気で演奏みちびく
自分で楽器をひかないけれど、オーケストラが曲をかなでるのに欠かせないのが指揮者です。スポーツでいえば、投手に指示を出して球を投げさせ、試合をコントロールする野球の捕手に似ているといいます。
「ただし、コントロールできるようになるまでが長い道のり」と原田さん。50代ではまだ「若手」、80代で初めて「巨匠」と呼ばれるような息の長い仕事です。
オーケストラには100人ほどの演奏者がいます。同じ曲でも速く、ゆっくり、はげしくなど、めざす演奏は人それぞれです。そこで原田さんは「スポンジ」になり、一人ひとりの思いを吸収。どんな演奏にするか決めてリハーサルで伝えます。
伝える方法は言葉だけではなく、指揮棒のふり方、目やまゆの動かし方、体全体でかもしだす雰囲気など。すばやく動けば大きな音になり、指揮棒をやわらかくふればゆったりした音で返ってきます。
リハーサルでうまくいっても、本番は別もの。お客さんが入ることで音のひびきが変わります。どんなハプニングが起きても「演奏者を落ち着かせ、演奏できる雰囲気にするのが指揮者の役目」。演奏者の気持ちを想像しながら、リーダーとして演奏を成功へとみちびきます。
インターナショナルスクールに通った小学生のころ、高校生が演じたミュージカルを見て衝撃を受け、ミュージカル俳優をめざしました。中学生でたまたま手に取ったサックス奏者のCDを聞き、「こんな美しい楽器があるんだ」と感動。吹奏楽部に入りました。
本格的に音楽の道に進むため、アメリカの芸術高校に留学しました。初めてプロの指揮者のもとで演奏して「これが音楽なんだ」と実感。指揮者を志しました。大学時代はロシアに行って指揮を学び、21歳でモスクワ交響楽団を指揮してデビューしました。
- 1985年
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東京都生まれ
- 2002年
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高校2年でインターロッケン芸術高校(アメリカ・ミシガン州)に留学。指揮者をめざし始める。アメリカの大学に通いながら、長期の休みをつかいロシアでも指揮法を学ぶ
- 2006年
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指揮者としてデビュー
- 2020年
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アメリカのサヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督に就任
- 2021年
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東京交響楽団の正指揮者に就任
曲よみとくため 勉強重ねる
コンサートに向けて日々、勉強を積み重ねます。演奏中、目の前に置くのはピアノ、フルート、バイオリンなどの楽譜をすべて合わせたぶあついスコア。そこにきざまれた音をすべて頭にたたきこみ、指揮のアイデアを練ります。
曲を書いた作曲者のことも勉強します。生きている人なら連絡をとって質問します。すでにこの世を去った人なら、伝記や日記を調べます。その曲を書いた時はどこにいて、何を食べていたか、友だちとの関係はどうだったのか。そうした情報から「作曲家に近づく」ことで曲をよみとき、指揮に生かすそうです。
2023.3.6付 朝日小学生新聞
構成・松村大行
イラスト・たなかさゆり
毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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