児童書翻訳家 のしごと

2023.02.10 紹介します○○のしごと

児童書翻訳家の中井はるのさんと飼いネコのミアちゃんの画像
パソコンに向かい翻訳をする中井はるのさんと飼いネコのミアちゃん=2022年11月9日、東京都内
児童書翻訳家の中井はるのさん

中井はるのさん

外国語をやさしく、日本語に

これまでに「グレッグのダメ日記」や「ワンダー」シリーズなど、英語の児童書を中心に翻訳してきた中井さん。訳す本は、自分で見つけたり、出版社の編集者からすすめられたりして決めます。

編集者とスケジュールを決めると、一度ざっと全体を訳します。気になるところがあれば、原作者に聞いたり、その分野にくわしい人に取材したりして確認します。「特に確認するのはきょうだい関係。英語では『兄』も『弟』も同じ単語だからです。物語に直接関係ない部分でも、どうしてそう書いたのか、背景を聞くようにしています」

児童書の翻訳は、ただ訳すのではなく「やさしい言葉でわかりやすく、子どもに届く言葉で伝えること」が大切だといいます。編集者とやりとりをくり返して修正を加え、翻訳が完成します。デザイナーが表紙や本文のデザインをして、本ができあがります。

中井さんの仕事場には、資料がたくさんつまった本棚があります。翻訳する作品の舞台である地域や時代を調べるためのものです。時には現地に足を運ぶこともあるそうです。「実際に見ると物語の世界がすごくわかってくるんです。作品の背景や舞台をまず理解することが、翻訳の基本だと考えています」

児童書翻訳家の中井はるのさんのおしごとを紹介した漫画

あゆみ

小さいころから物語を読んだり、書いたりするのが好きでした。本や言葉の仕事は、ずっと意識していたかもしれません。中学生の時は、「ピーターラビット」シリーズや『海底2万マイル』をよく読んでいました。

銀行を退職したあと、アルバイトで翻訳に関わるようになりました。仕事と子育てに追われて追いつめられていた時期に、子どもに絵本を読み聞かせることがすごく救いになりました。子どもの本にお返しがしたい、関わりたいと思ったのがきっかけで、児童書の世界に入りました。

小学校時代
英語が身近で、将来は国同士を結ぶ仕事がしたいと思っていた
中学校時代
引っこみ思案だった。折り紙や時代劇にはまる
高校時代
美術部に入り、デザインに興味を持つ
大学時代
英文科に進む。英語でディベートする部活に入る
翻訳の世界に
銀行を5年ほどで退社し、翻訳の仕事を始める
2008年
『グレッグのダメ日記』を翻訳
やりがいや苦労

文化に合わせ言いかえも

原作が書かれた国と日本では文化がちがうため、子どもには伝わりづらい表現が出てくることもあります。たとえば、ペットの動物が日本では飼えなかったり、子どもに対して『軍隊の学校に入れるぞ』と言うシーンがあっても日本にはなかったり。「日本の文化にあわせた言いかえや、注を入れることもあります。さし絵と食いちがわないようにするのがむずかしい点です」

その中で、いい言葉がうかぶと『やった!』と感じるそうです。「なにより、読んでくれた人がおもしろかった、ここが良かったと感想をくれることがうれしいですね」

クローズアップ
児童書翻訳家の中井はるのさんがおしごとで使うタブレットと英和辞典、記録用のカメラの画像。「原稿に書きこみができる編集アプリにすごく助けられています」という
タブレットと英和辞典、記録用のカメラ。「原稿に書きこみができる編集アプリにすごく助けられています」

2023.1.16付 朝日小学生新聞
構成・小勝千尋
イラスト・たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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