児童書の編集者 のしごと

2023.01.05 紹介します○○のしごと

集英社の児童書の編集者、山下みのりさん
担当するシリーズ(『おチビがうちにやってきた!』柴野理奈子・作 福きつね・絵/集英社みらい文庫)を手にする山下さん=2022年10月6日、東京都千代田区 
集英社の児童書の編集者、山下みのりさん

山下みのりさん

集英社(東京都千代田区)

「読者」目線で最高の一冊に

山下さんは、出版社で働く児童文庫の編集者です。小・中学生向けの小説を作る「集英社みらい文庫」の編集部で働いています。こんな物語はどうですか?と作家に依頼して書いてもらい、原稿がさらによくなるように力をつくす、編集作業が主な仕事です。

これまで、約100冊の本を編集してきた山下さん。現在は「おチビがうちにやってきた!」シリーズの第6巻を編集中。同時に、第7巻の内容も作家と相談中だそうです。「打ち合わせはなるべく、直接会ってするようにしています。その場で、お互いに思いもつかなかったようなアイデアが生まれることがあり、おもしろい」と話します。

本作りは、登場人物やあらすじをまとめたプロットを作家が作ることから始まります。プロットが完成したら原稿を書いてもらい、山下さんが「最初の読者」になります。話がおもしろいか、つじつまは合うかなどをチェックして、作家に感想を伝えます。修正をお願いしたい場合は、納得してもらえる理由を必ずそえています。「物語を書くのは大変な作業です。だから、作家さんに納得して楽しく書いてもらうことが大事。これからも、子どもの気持ちに寄りそえる本を届けたいです」

集英社の児童書の編集者、山下みのりさんのおしごとの漫画

あゆみ

小学生のころから文章を書くのが好きで、小説家になることをひそかに夢見ていました。高校生の時、新聞に投稿した物語が掲載されたことも。一方で、学校で毎年開かれる作文コンクールには入賞できず、友だちの入賞作品の完成度に自信をなくしたこともあったそうです。

大学では新聞部へ入部。企画を出し、取材でいろいろな人に会い、記事を書く経験などを通して、自分は雑誌や本で企画する仕事をしてみたいんだなと気づき、出版社を目指しました。

1981年
東京都生まれ
1994年
桐朋女子中学校に入学
1997年
桐朋女子高校に進学。中3で入ったバレーボール部を高校でも続け、一生の仲間に出会った
2000年
上智大学文学部社会学科(現・総合人間科学部社会学科)に入学
2004年
集英社に就職、雑誌の編集部に配属される
2010年
集英社みらい文庫の編集部に異動
やりがいや苦労

時間と手間 発売時はドキドキ

本作りには時間も手間もかかります。例えば、「集英社みらい文庫」で新シリーズを企画して発売するのに、およそ1年。作家のほか、絵を担当するイラストレーターやデザイナー、校閲、印刷会社など、たくさんの人がかかわります。全体のスケジュールを管理するのも編集者の仕事です。新刊の発売時はいつもドキドキするそうです。

「サイトやハガキで寄せられる感想や、ファンレターなどで、読者に届いていると感じられると本当にうれしいです。大勢の子どもに支持されて、本を増刷できたときは最高ですね」

クローズアップ
集英社の児童書の編集者、山下みのりさんのおしごと道具
作家との打ち合わせやメールチェックに使う携帯電話と、原稿チェックに欠かせない文房具

2022.10.24付 朝日小学生新聞
構成・戸井田紗耶香
イラスト・たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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