川瀬悟さん
オーガニックファーム所沢農人雑草や昆虫とともに野菜作り
農薬や化学肥料を使わずに、野菜などの農作物を生産し、販売するのが有機農家の仕事です。手間はかかりますが、環境と生態系を守りながら、安心できる農作物作りをめざします。
川瀬さんは1.6ヘクタールの畑で、150種類の野菜を育てています。旬の野菜をバランスよく生産し、今はキュウリやトマトなどが収穫を迎えています。きれいに並んだ野菜のそばには雑草が生え、バッタがはね回っています。
雑草は本来、農作物が必要とする栄養や水分をうばってしまうため、農家にとってはやっかいな存在です。しかし、川瀬さんは雑草や昆虫の存在を受け入れ、共生しながら野菜を作ります。
雑草に負けない野菜を効率よく育てるために、野菜の特徴を生かした作付けが欠かせません。どこに、どんな野菜を、どれだけ育てるかという計画をしっかりと立てます。
土作りも大切です。川瀬さんは土に混ぜる肥料に、もみ殻と野菜などの残りかすを発酵させたものを使っています。
収穫した野菜はマルシェと呼ばれる屋外の市場やインターネットなどで販売しています。取引や売り上げも自分で管理します。
両親が家庭菜園で野菜を育てていたので、小さいころから種まきや草取り、収穫の手伝いをして育ちました。
高校生の時に生き物と環境の関係について書かれた本を読み、生態学を学びたいと考えるようになりました。大学、大学院では生態学を研究する一方、時間を見つけてはボランティアで農家の手伝いをしていました。
卒業後は物流関係の仕事につきました。とても充実していましたが、10年間働いた後、今後本当にやりたいことは何かと考え、有機農家として再スタートを切りました。
- 1980年
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神奈川県生まれ
- 1996年
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神奈川県立橋本高校に進学
- 2001年
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東京農業大学森林総合科学科に進学
- 2005年
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北海道大学大学院環境科学院に進学
- 2007年
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株式会社INAX(現LIXIL)に入社。物流部に配属。16年退職
- 2017年
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農業研修生として有機農業を学ぶ
- 2018年
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有機農業を始める
お客さんの「おいしい」を裏切らない
サラリーマンを辞めて、1年間、農業研修生として有機農家で農業を学びました。独り立ちした最初の年は、本当に野菜ができるのかと不安で、恐怖すら感じながらの生産と収穫だったといいます。
しかし、今では「川瀬さんの野菜だから買いたい」と言ってくれるお客さんが増え、やりがいを感じています。特に子育て世代のお母さんたちから「川瀬さんの野菜なら子どもが食べてくれる」と聞くと、つかれもふき飛びます。お客さんの「おいしい」を裏切らないように、現状に満足せず、常に最善の野菜作りをめざしています。
2022.7.18付 朝日小学生新聞
構成・浴野朝香
イラスト:たなかさゆり
毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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