書店員 のしごと

2021.12.24 紹介します○○のしごと

書店員のしごと
文芸書の棚の整理をする佐々木梓さん=2021年7月20日、大阪市北区のジュンク堂書店大阪本店
書店員のしごと

佐々木梓さん

ジュンク堂書店大阪本店 文芸書担当

売り場の棚をいつも魅力的に

児童書やビジネス書など、本のジャンルごとに分かれた棚の「管理」をするのが書店員の仕事です。

佐々木さんが担当するのは、単行本の小説などの文芸書です。新刊を棚に出し、売れ行きを見守り、状況に応じて入れかえます。入荷数を決めるのも棚の担当者です。

「背表紙が見えるように並べる『棚差し』、表紙が見えるように置く『面陳列』など、見せ方はさまざまです」

棚をいかに新鮮に、魅力的に保つかが書店員の腕の見せどころ。「作者の五十音順に並べるだけではおもしろみがない。この本を読むならあの本も好きかな、という視点で並べることもあります。また、作中に本が出てくる作品の場合は、その本も合わせて紹介するなど工夫します」

空いた時間を使い、おすすめの本の紹介文「ポップ」を書きます。たとえば、日本人の名前の歴史をたどった新書『氏名の誕生』(尾脇秀和著)は、「これ1冊読むと、時代劇のおもしろさが倍増です」と紹介しました。

「なぜ読んでほしいのか、簡単に短く伝える場合もあれば、熱量を持って長くつらつらと書く場合もあります」。根底にあるのは、おもしろいと思った作品をすすめたい、という気持ちだといいます。

書店員のしごと

あゆみ

小学生のころから読書が大好きでした。おばがくれるクリスマスプレゼントは毎年、本でした。当時好きだったのは「わかったさんのおかしシリーズ」(寺村輝夫作)です。

中学・高校では吹奏楽部でホルンを担当。「練習はきつかったけど、楽しかったです」。高校生のころ、クラスになじめない時期がありましたが、読書に没頭して救われました。

大学生の時に書店でアルバイトを経験。「毎日、いろいろな本が出ていて、興味深かった」。本を好きな気持ちが決め手となり、書店員になろうと考えました。

1991年
兵庫県生まれ
1995年
神戸市兵庫区で阪神・淡路大震災にあう
2010年
「世の中のしくみを知りたい。そのために法律を学ぼう」と、関西学院大学法学部に進学
2014年
丸善ジュンク堂書店に入社。梅田店(大阪市北区)に勤務する
2021年
大阪本店(大阪市北区)に移る
やりがいや苦労

「推し」のポップで売り上げ増加

作品をすすめたい思いが、うれしい結果を生んだこともあります。ある音楽家の成長をえがいた『革命前夜』(須賀しのぶ著)の文庫本が出た当初、売り上げに大きな動きはありませんでした。一方で、佐々木さんは「おもしろいので、もっと広めたい」。

熱い気持ちをこめたポップを置いたところ、買い求める人が増えました。丸善ジュンク堂の全国の約80店舗で展開するように。作品は売れ、佐々木さんのポップは出版社のツイッターで紹介されました。「作品を推し、反応をいただけるのは本当にうれしい」とやりがいを語ります。

クローズアップ
書店員のしごと
佐々木さんが手がけたポップ。強調したい部分は色を変えるなど工夫しています

2021.9.20付 朝日小学生新聞
構成:中塚慧
イラスト:たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
朝日小学生新聞のホームページはこちら