
子ども写真館(こどもしゃしんかん)のカメラマン
誕生日や七五三、入学などの節目(ふしめ)に、すてきな衣装に身を包み、撮影スタジオで記念写真を撮ったことはあるかな。子どもたちに笑顔で接し優しい声がけをしながら撮影するのが、子ども写真館のカメラマンだ。子どもを専門的に撮影するには、一般的なカメラマンとは異なるテクニックや心づかいが必要なんだって。どんなところに配慮して仕事をしているのかな。(写真提供/スタジオアリス 撮影地は千葉県成田市)
自然な表情を引き出し、家族の思い出を未来へ残す
スタジオ撮影は慣れない場所で知らない人と接するため、緊張してしまう子も多いといいます。カメラマンは、子どもの自然な表情を捉えるために明るく楽しい雰囲気を作り、リラックスしてもらえることを心がけています。

うちわ、タンバリン、音の鳴るおもちゃ、ぬいぐるみなどでコミュニケーションをとる。気分が乗ってくると、好きなアニメのポーズを決めたり、踊り始めたりする子も。表情が豊かになることで、より良い写真が撮影できる(撮影地=千葉県成田市)
まずは、普段家族から呼ばれている名前で呼びかけ、おもちゃやぬいぐるみなどで一緒に遊びながらスタジオの雰囲気に慣れてもらいます。さらに、ドレスやタキシード、着物など約500着の衣装から好きなものを選んでもらい、ワクワク感を高めます。
撮影はアシスタントとの2人体制で行い、こだわるのは「笑顔」です。カメラマン自身がカメラの前に出て子どもをあやし、笑顔が出た瞬間にカメラポジションへ素早く戻ってシャッターを切ります。あやすときはアシスタントと連携し、「かっこいいポーズだね!」「その仕草(しぐさ)、かわいいね!」「上手におすわりできたね」といった声かけで場を盛り上げ、子どもの視線がカメラへ向くように導きます。

ハンガーラック、カウンター、下駄箱などは角を丸く設計し、床は柔らかいクッション素材を使用。また、コンセントや、自動ドアのボタン位置も子どもが届かない高さに設置して、安全面に配慮している(撮影地=大阪市)
赤ちゃんには音の鳴るオモチャやうちわを使って興味を引き、笑顔で話しかけながらシャッターを切ります。1歳半~5歳くらいの子には、ぬいぐるみやおもちゃを使って話しかけ、遊びながらカメラに目線が行くように工夫。5歳以上なら好きな色や食べ物などをきっかけに笑顔でコミュニケーションをとりながら、自然な表情を引き出します。
年齢や成長段階はもちろん、子どもの性格に合った接し方や声がけをすることが、この仕事の難しいところ。例えば人見知りをする子には保護者も交えて楽しく会話をし、騒いでしまう子には、小声で話しかけて集中できる雰囲気を作るなどの工夫をしています。

誕生日のお祝いなど、うれしい記念として撮影することが多い。子どもが楽しく過ごして笑顔になるように、「これをしてはダメ!」などの否定的な言葉は使わない(撮影地=東京都中央区)
泣き顔やすまし顔になることもありますが、そのときにしか見られない大切な表情です。写真に残すことで、「あのときは大変だったけど、いい思い出になったね」と家族で振り返ることができます。
カメラマンは先輩スタッフを見て学ぶほか、カメラだけでなく照明や着付け・ヘアセットの技術研修を受けるなど、たくさんの「引き出し」を作りながら臨機応変な接し方を身につけています。保護者から「子どものいい表情が見られた」「こんな顔もするんだ!」という感想をもらったときに、やりがいを感じるといいます。
子どもの記念写真は、撮影の思い出も含めて未来へと残せる「宝もの」。大切な宝ものを撮影するカメラマンは、家族の一員のような気持ちで子どもたちの成長を願いながら、この仕事と向き合っています。
どうしたら子ども写真館のカメラマンになれるの?
子ども写真館を運営している会社へ、カメラマンとして就職します。経験がなくても、多くの会社では研修があり撮影技術を学ぶことができます。専門知識を養うために、写真関連の学校へ進学しても良いでしょう。