懐中電灯を片手にのぞき込んでいるあのひと、何してる?

2024.12.16 あのひと何してる?

ペット探偵が猫を探している画像

ペット探偵

ペットは大切な家族の一員。急にいなくなると飼い主さんは心配でたまらなくなるよ。そんな時はペット探偵の出番だ。失踪(しっそう)したペットの足取りを追って見つけ出し、飼い主さんのもとに戻してあげるのが、ペット探偵の仕事だよ。どんなふうに捜索(そうさく)するのかを見てみよう。(写真提供/ペットレスキュー、撮影地はいずれも神奈川県藤沢市)

ペットの個性や失踪状況をヒントに仮説を立てて地道に捜索する


ペット探偵は猫や犬などのほ乳類・鳥類・は虫類・昆虫などの捜索依頼を受けています。現地に行けない場合は電話で相談に乗り、捜索のアドバイスをします。ペットの種類によって発見率は異なりますが、7割〜8割ほどは見つけられるといいます。


依頼件数の7割を占(し)めるのが、猫の捜索です。猫が迷子になるのは、普段は閉めている窓を開けるなど人がいつもと違う行動をしたときや、猫が発情期を迎える3月〜5月と7月〜9月が多いといいます。

ペット探偵が使う道具の画像

肉眼では確認できない暗闇でも映像を記録できる「単眼(たんがん)ナイトビジョンスコープ」、録画用のビデオカメラ、動物や人の動きを感知して自動的に撮影する「トレイルカメラ」などの道具を車のトランクに備えている

捜索で最も重要なのが「その猫に合う捜索方法を見つけること」。性格や生い立ちによって行動パターンは違うため、1頭ごとに違うアプローチをします。家から出たことがない臆病(おくびょう)な猫は、家のそばでじっと隠れる一方で、野良猫だった経験のある猫は遠方に住み着いている可能性があります。一般的に猫は次の方法で捜索します。


まずは飼い主さんから、いなくなった日時や状況・猫の性格・年齢・行動範囲・生い立ちなどを聞きます。失踪した現場に行き、猫と同じ目線になって「このすき間から外に出て、左に行くと交通量が多い道があるから、右側の静かな住宅街に行っただろう」などと仮説を立てます。

ペット探偵が使う道具の画像

猫の保護に使う道具。中央の2つ並んだ円柱型の「ラウンドハウストラップ」には取っ手が付いていて、保護した猫をそのまま運ぶことができる。奥に立てかけてある捕獲用の網は、紐(ひも)をしぼることで、保護した猫が飛び出すのを防ぐことができる

次に、飼い主さんの自宅付近の点検です。猫は建物と塀のすき間や縁の下、茂みの中など、狭くて暗い場所に潜(ひそ)むので、すみずみまでチェックします。さらに、猫の写真や特徴を載(の)せたチラシを作り、近所に配ります。


猫が通りそうな場所にはカメラや捕獲器(ほかくき)を設置します。猫の行動パターンを探りつつ、捕獲器に入るのを待つのです。えさにつられて中に入った猫が踏み板を踏むと扉が閉まる仕組みになっている捕獲器のほか、人が紐(ひも)を引っ張って動かす「ドロップ式トラップ」など、複数の捕獲器を状況に応じて使いわけています。ドロップ式トラップは、タイミングを見てすばやく紐を引く必要があるので、トラップから目が離せません。猫が中に入るのを12時間待ち続けることもあります。

ペット探偵に捕獲され飼い主のもとに戻った猫の画像

(上)捕獲器に入った猫。慣れない暮らしに疲れて弱っていることが多い。1日でも早く見つけ出すことは命を救うことでもある。(下)猫はその後、適切なケアで元気に回復した

犬は移動スピードが速いので、猫とは違う方法で探します。体の大きさや失踪状況、地形などを考えつつ半径数kmで捜索を始め、見つからない場合は少しずつ範囲を広げていきます。また、SNSやポスターを使って広範囲から情報を集めます。飼い主さんからていねいに聞き取りをし、個性に応じた捜索を行う点は猫と同じです。


夏の暑い日に20kmもの距離を歩くこともあるなど、ペット探偵は体力的にたいへんな面も多い仕事です。しかし、もっともつらいのはペットが見つからなかったとき。ペットを助けられなかったことや、落ち込んでいる飼い主さんの力になれないことが何より悲しく、「仕事だから」と割り切って考えることは難しいといいます。


一方、ペットが無事に見つかり、飼い主さんと再会できたときの感動は、ペット探偵の仕事をするモチベーションになっています。

どうしたらペット探偵になれるの?


ペット探偵をしている会社に入り、スキルを身に着ける方法があります。動物と過ごした経験の豊富な人が向いています。長距離を歩く体力や、あきらめずに探し続ける粘(ねば)り強さに加え、状況に応じて行動する柔軟さも必要です。また、パニック状態の飼い主さんに親身に対応するコミュニケーション能力も求められます。

協力/ペットレスキュー

取材・文/伊藤恵子