切手デザイナー
はがきや手紙を出すときに貼る「郵便切手」。切手を使うと日本国内はもちろん、海外にいる人たちにもはがきや手紙を送ることができるよ。小さな切手には、動物や植物、風景、人物など、いろいろな絵が描かれているんだ。写真は、切手デザイナーがルーペで切手をのぞき、印刷の具合を細かくチェックしているところだよ。(写真はいずれも東京都千代田区大手町)
絵を描いて切手という小さな世界をデザインする
郵便切手は、大きく分けると「普通切手」と「特殊切手」の2種類あります。
「普通切手」は、郵便料金の支払いのために発行されている切手です。1円切手や85円切手、110円切手など、23種類あり、郵便局や一部のコンビニなどで1年中購入できます。
一方、「特殊切手」は、季節や行事、記念日などに合わせて発行する切手で、販売期間と発行枚数が限られています。記念行事やアニメや絵本などのキャラクターが描かれたものや、季節の植物や風景を散りばめたシリーズ、グルメや旅をテーマにしたものなど題材はさまざまで、サイズも形もバラエティーに富んでいます。普通切手が裏面を水にぬらしてから貼る「のり式」なのに対して、シールタイプがほとんどで、切手とあわせて切手シートの余白もデザインされています。
左に並んでいるのが「普通切手」で、中央と右にあるのが「特殊切手」。特殊切手は、シート全体に絵柄がついているのがわかる
デジタルの場合、大きな画面で確認しながら絵を仕上げることができる
アクリル絵の具で描いた年賀切手のイラスト
切手デザイナーの仕事はまず、誰に向けた切手なのか、どんなテーマで描くかなど、コンセプト(基本的な観点)を考えることから始まります。題材を深く知るために、図鑑や資料にあたり、専門家に取材しながら、世界観や絵柄を決めていきます。ときには街へ出て、植物を観察したり、書店で本を見たり、デパートでお菓子やパッケージを眺めたり、日常生活の中からヒントを探ります。
コンセプトが決まったら、絵を描き切手をデザインします。切手の絵は、手描きのほか、パソコンやデザイン用のソフト、ペンタブレットなどのデジタル機器で描きますが、現在はデジタルで描くことが多いです。デジタルは細かい部分まで描ける良さがありますが、小さな切手になったときに絵がつぶれて細かなところが見えないこともあるため、描き込みすぎないように気をつけています。一方、手描きの場合は、絵の具や色鉛筆などを使って、切手の4〜6倍ほどの大きさの画用紙に描き、スキャナーを使ってデザインをパソコンに取り込みます。
切手のデザインの仕事は、ひとりで切手に向き合う時間が長いですが、実はチームの仕事でもあります。切手デザイナーが作った複数のデザインを見比べながらチーム内で意見を出し合い、より良いデザインを作りあげているのです。
そして、印刷の工程へ。印刷所から届いた校正紙(こうせいし=印刷物の色や配置などを確認するために試し刷りをしたもの)を点検するのも切手デザイナーの大事な仕事です。ルーペでのぞき込み、「色が正しく印刷されているか」、「絵がつぶれていないか」、「濁(にご)りはないか」などをチェック。細やかな調整を経て、切手は完成します。
切手デザイナーは、1枚の切手だけではなく、切手シート全体をデザインすることもあります。題材を正確に描くことや、何が描かれているかがひと目でわかる絵であること、見た人に「使ってみたい」と思ってもらえるデザインにすることを心がけています。
どうしたら切手デザイナーになれるの?
日本郵便の切手・葉書室に所属し、先輩から教わりながら仕事を学びます。現在所属する切手デザイナーは、美術系の学校を卒業しており、専攻はデザインに限らず、日本画や油絵、工芸など幅広く学んできています。絵やデザインの仕事を目指すとき、日々さまざまなことに関心を持って取り組むことも大切です。