やぐらの中で機械を操作しているあのひと、何してる?

2024.12.13 あのひと何してる?

ボーリング工が掘削作業をしている画像

ボーリング工(こう)

「ボーリング(boring)」とは、「掘る」「突き通す/あなをあける」を意味する言葉。機械を使って地面を削り、あなを掘るのがボーリング工の仕事だよ。ボーリング工事は、さく井(さくせい=井戸を掘ること)、石油・天然ガスなどの地下資源の調査、地すべり対策など、さまざまな目的で行われるんだ。特に需要が高い建設分野の地質調査を例に、どんな仕事をするのか見てみよう。(写真提供/加藤ボーリング 撮影地は広島県世羅町)

目に見えない地中を安全かつ効率的に掘るプロフェッショナル


地質調査は、道路やトンネル、大きなビルなどを造るときに、その基礎となる土地の強さや性質を把握するために行います。


調査の目的によって掘る深さは異なり、例えば、地盤の硬さを調査する場合には、30~50m掘るのが一般的です。原子力発電所など絶対的な安全が求められる施設を建設するときは、100~200m掘って、断層(だんそう=地層や岩盤に割れ目ができ、互いにずれている現象)がないか確認します。ひとつの現場で数カ所を掘って調査するのが一般的です。

ボーリング工が工事をしている画像

足場が崩れると大きな事故につながる恐れがあるので、細心の注意を払って足場を組む=広島市

最初に行うのは、仕事の基地となる「足場(あしば)」づくりです。「ステージ」と呼ばれる作業空間をつくって機械を乗せ、鋼材(こうざい)を使ってやぐらを組んでいきますが、その方法は現場の環境ごとに異なります。ボーリング工は、地形や地面の状況などを観察し、「こう組んだ場合どうなるか。安全が保てるか」と想像力を働かせながらその場所に最適な足場の形や組みかたを工夫します。


足場を組み終えたら、機械を操作するオペレーターと助手がペアになってボーリングマシンを稼働させます。マシンの先端(せんたん)には、ドリルの役割をする「ビット」が取り付けられており、このビットが回転し、地面を垂直に掘り進めていきます。

ボーリング工が工事をしている画像

ロッドを通じて先端のビットに送られた水は、泥水となってケーシングパイプとロッドの間を通って地上に戻ってくる=広島市

硬い地層を砕きながら掘り進めるため、ビットの先端がこすれてすり減ったり、摩擦(まさつ)の熱でとけてくっついたりしてしまいます。これらを防ぐために、エンジンの回転をビットに伝える「ロッド」と呼ばれる管から、ビットに水や薬剤を送ります。また、「ケーシングパイプ」と呼ばれる器具を掘り進めたあなに挿入して、ボーリング工事中にあなの壁面(へきめん)が崩れるのを防ぐ工夫もしています。


ボーリング工は、地面を掘りながら土の硬さを調べ、土壌や岩石の試験に用いるサンプルとなる「コア」を採取(さいしゅ)。持ち帰ったコアは、土の密度や粒度(りゅうど=粒の大きさや分布の状態)を調べるなど液状化の試験に使われます。この試験結果をもとに、建築物の設計やどのように工事を進めるかを決定できるのです。

ボーリングマシンで採取した「コア箱」の画像

ボーリングマシンで採取した試料を入れる「コア箱」=広島市

近年は、集中豪雨による土砂災害などの影響もあり、自然災害対策の事前調査としてボーリング工事が必要とされています。社会の安全を守るために欠かせない仕事である一方、屋外での立ちっぱなしの作業などで体に負担がかかる上、事故を起こさず精密に掘り進めるために集中力が要求されるなど、大変な面もあります。それでも、ボーリング工事を完了させた土地にビルや道路が建設されたのを目にすると、やりがいと誇りを感じるといいます。

どうしたらボーリング工になれるの?


地質調査会社、石油や井戸の掘削(くっさく)会社など、ボーリング工事を行う会社に就職して技術を身につけます。各都道府県の労働局長が指定する登録教育機関が実施する講習を受けて、ボーリングマシンに関する知識や法令(ほうれい=法律と行政機関が制定する命令)を理解することも必要です。さらに、「地質調査技士」などの資格をとると仕事の幅が広がります。自然を相手にする仕事のため、土に親しんだり、山で遊んだりした経験がある人なら、好奇心を持って仕事に取り組めるでしょう。

協力/加藤ボーリング株式会社

取材・文/伊藤恵子