管楽器リペアスタッフ(かんがっきりぺあすたっふ)
吹奏楽やオーケストラ、ジャズのコンサートなどで演奏される管楽器。演奏者は、呼吸をうまく操って楽器を鳴らし、美しい音色を観客へ届けているよ。管楽器はとてもデリケートな楽器だから、定期的な修理や調整が必要なんだって。そこで活躍するのが修理を担当する管楽器リペアスタッフだ。「リペア」とは「修理する」という意味の英語だよ。(撮影=朝日学生新聞社、いずれも東京都千代田区神田駿河台)
管楽器を修理して、演奏者の出したい音色に調整
管楽器には、トランペット、ホルン、トロンボーンなどの「金管楽器」と、フルート、クラリネット、サックスなどの「木管楽器」があります。種類が多いうえ、音色や音が出る仕組みは異なり、部品の数もそれぞれ。例えばホルンは約300個、サックスは約600個もの部品が使われています。
管楽器リペアスタッフは、精密で壊れやすい管楽器の定期点検や不具合の修理をすることが仕事です。そのほか、店頭で販売する中古の管楽器の整備や、オリジナル商品の検査なども担当しています。
依頼される修理内容は、金管楽器の場合、ぶつけた凹みの修正、動かなくなったピストン部分や抜き差し管(スライドさせて音程を調整する部分)の修理など。木管楽器は、接続部がきつい・ゆるいときの調整、PAD(トーンホール=管本体に開けた穴をふさぐ部分。タンポ)の破れ交換、音色のバランス調整などが多いです。
修理で使うハンマー。材質は真鍮(しんちゅう)や木などがあり、楽器の素材や修理の内容によって使い分ける
例えば、金管楽器のへこみは、金属や木のハンマーで慎重にたたいたり、金属製のローラーで平らにならしたりします。木管楽器のヒビ割れには同じ材質の粉末を練り込み、乾燥させてヤスリで削って仕上げます。具体的な作業は、たたく、削る、こする、曲げる、磨く、溶接する、部品を換える、部品を作るなどさまざまです。そのため、ドライバー、ハンマー、ベンチ、ニッパー、ヤスリ、ペーパーといった専用工具を40種類以上使いこなしています。
軽度の修理であればその日に対応できますが、部品の動きを調整するなど大がかりな修理には3週間くらいかかることも。楽器を落としたといった「重症」の場合は、2カ月くらい必要なこともあります。
修理の際には、楽器を超音波の洗浄装置で洗うことも
万力(まんりき)という装置にトロンボーンのスライド管を固定して、重なる外管と内管が、すれないように調整。スムーズに動くと、いい演奏につながる
依頼者は、部活動などで演奏している学生が多く、加えて、プロの演奏者や自衛隊の音楽隊などもいます。演奏者によって奏法や鳴らしたい音も違うため、単に修理をするだけでなく、同じ音程の中でも「もっとふくよかな低音に」「もう少しやわらかい音に」といった要望に合わせて微調整して仕上げることが大切です。演奏者がストレスなく演奏に集中して舞台上でイキイキと輝く姿を思い描きながら、仕事に取り組んでいます。
どうしたら管楽器リペアスタッフになれるの?
音楽系の専門学校や大学などで、基礎知識と技術を学ぶのが一般的です。卒業後、楽器メーカーや修復専門の会社に入社するか、直接工房に弟子入りする人も。吹奏楽部などに入って、楽器演奏の経験があると強みになるでしょう。