車いすに乗る人と話すあのひと、何してる?

2024.09.18 あのひと何してる?

運転補助装置コンサルタントが仕事をしている画像

運転補助装置(うんてんほじょそうち)コンサルタント

手や足が不自由な人は、どうやって車を運転するんだろう。運転席に座るサポートや足を使わずに手だけで操作をするなど、体に障害があっても一人で運転できるための装置があるんだ。これらの装置を「運転補助装置」というよ。様々な運転補助装置を車に取り付けるための相談を受けたり提案をしたりするのが、運転補助装置コンサルタントのお仕事だよ。(写真提供/ミクニライフ&オート 撮影地はいずれも愛知県豊明市)

お客さんの体の状態に合わせて装置を選ぶ


運転補助装置にはたくさんの種類があります。例えば、足が不自由な人が、手だけでアクセルやブレーキの操作ができる「手動運転装置」。これは自動車のハンドルに取り付けます。また、右足が不自由な人のために左足だけで操作できる「左アクセル・ブレーキ」や、手の握力がない人のためにサイドブレーキに取り付けることで操作しやすくする「サイドブレーキブラケット」、車いすから座席への移動をサポートする台座(だいざ)「サイドサポート」などもあります。どの装置も、障害のある人とない人が車を共有できる形で設置できます。

運転補助装置の運転シミュレーター

運転シミュレーター。上段の黄色い部分についているのが、形状の異なる「旋回ノブ」。使いやすいノブを探す

運転補助装置は、お客さんが元々所有している車や、新たに購入した車に取り付けます。コンサルタントは、お客さんの体の状態や運転する車種、車いすのサイズなどを確認した上で、必要な装置や取り付けについて技術者と相談をします。


取り付ける装置を決める際は、お客さんに運転シミュレーターや展示車の補助装置を触ってもらいます。例えば、手動運転装置の一つで、ハンドルに取り付けて操作を補助する「旋回(せんかい)ノブ」の場合、丸型や筒型など様々な形状があります。コンサルタントは運転シミュレーターのハンドルにノブを一つずつ設置して、お客さんに使い心地を比較してもらいます。実際に見て、触って、体験してもらうことで、使う人に合った装置を提案しやすくなるのはもちろん、初めて手動運転装置を使う人に対してわかりやすく説明することができるのです。

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電話対応や書類作成、データ入力などのデスクワークも行う

運転補助装置が決まり正式な注文を受けると、工場で装置の製造が始まります。装置が出来上がったら、お客さんが確認する「仮合わせ」をし、必要な場合は調整をします。OKが出たら、車に装置を取り付けて完了です。


運転補助装置を取り付けて車を購入する場合、自動車販売店からお客さんへ納車されます。体の不自由な人のための福祉車両を購入する場合には、運転補助装置の購入助成金が交付されたり、消費税や自動車税などが非課税になったりする制度があり、その手続きが必要だからです。手続きに必要な書類作成なども、コンサルタントの仕事です。


お客さんの悩みや要望に応じた提案をするには、車の種類や装置の知識、障害についての知識や理解が欠かせません。本などを通して勉強しながら、実際に車いすを使って生活している技術者から障害について教えてもらうことで理解を深めています。また、敬語や接客技術の研修を受けながら、より良い接客ができるよう技術を磨いています。


地域の小学校からの依頼で、福祉車両に触れてもらう活動もしています。子どもたちは福祉車両に興味津々(しんしん)で、楽しそうに運転席に座ったり、装置に触れたりしているそうです。


今後、自動運転の技術がさらに進歩すると、運転補助装置の形も変わってくるかもしれません。しかし、車に乗り込む時のサポートなど、体に障害のある人々の移動を手伝う仕事は、これからも必要とされるでしょう。

どうしたら運転補助装置コンサルタントになれるの?


特別な資格は必要ありません。学校を卒業してから、運転補助装置を作る会社に入って経験を積みます。人の役に立ちたい人や、優しい気持ちを持っている人、車が好きな人に向いている仕事です。

協力/株式会社ミクニライフ&オート

取材・文/かたおか由衣