チクチク縫っているあのひと、何してる?

2024.06.14 あのひと何してる?

ぬいぐるみプランナーのお仕事を紹介する画像

ぬいぐるみパタンナー

うさぎやクマ、ひよこ、パンダなどのみんながよく知っている動物をモデルにしたぬいぐるみ。動物それぞれのフォルム(姿・形)やしぐさ、表情などを、かわいくリアルにデザインするのが「ぬいぐるみパタンナー」のお仕事なんだ。写真は、パタンナーがぬいぐるみのサンプルを作っているところだよ。(写真提供/吉徳)

平面の絵から立体物へ。ぬいぐるみの設計図を作るお仕事


ぬいぐるみパタンナーのお仕事は、ぬいぐるみの完成形を想定したイメージアート(デザイン画)を作ることから始まります。描くのは、正面、側面、背面からの「三面図」と呼ばれるもの。ぬいぐるみのポーズや、かわいさが際立つボリューム感を考えながら、時間をかけてデザインを突き詰めます。

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イメージアートから作った“紙ふうせん”のような立体物=東京都台東区

ぬいぐるみの完成イメージが決まったら、「型紙」(設計図)を作る工程に入ります。まずは三面図をもとに、ぬいぐるみの耳や手足、胴体などの各パーツを計測。どこにボリュームがあるかを確認しながら、耳や手、足などそれぞれの型を具体的な形に描きます。その型を切って貼り合わせ、紙ふうせんのような立体物を作製。見え方を確認し、型の形を調整します。そして布などの生地に型紙をあてて裁断し、縫い合わせながらぬいぐるみのサンプルを作ります。「もう少し羽を大きくしたい」「膨らみを出したい」など、社内で集めた意見をもとに、型紙を修正して再度縫い合わせ、サンプルを仕上げます。

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生地に型紙をあて、ハサミで切る=東京都台東区

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生地を縫い合わせてぬいぐるみのサンプルを作る=東京都台東区

ぬいぐるみに使う「生地」や「素材」を選ぶこともパタンナーの重要な仕事です。生地や素材はぬいぐるみのかわいさを表現する大切な要素。毛足の長さや伸び縮みによって仕上がりが大きく異なるため、型紙を作る段階で慎重に選びます。


動物の特徴をとらえて再現するために、写真や動画で動物のフォルムやしぐさを観察し、その動物が好きな人や飼っている人に話を聞くなどの情報収集も欠かせません。


例えばうさぎは、耳は体のほかの部位と比べると毛が短く薄いという特徴があります。ぬいぐるみを作るときは、耳には毛足の短い素材や薄い生地を採用して、うさぎらしさとかわいさを表現します。ほかにも、動物の独特のたるみを表すために伸びのいい生地を使い、フォルムを再現するためにふわふわとした素材を選ぶなど、試行錯誤を繰り返します。形やかわいさ、触り心地を追求し、型紙と、生地や素材を決めていくのです。


型紙とサンプルが確定したら、専門デザイナーが指示書を作り海外の工場に送ります。その後工場で生産され、完成品(商品)として日本に戻り店頭へ。SNSなどでいろいろな人に愛される様子を知れるのが、仕事の醍醐味(だいごみ)だといいます。経験を生かしながら、かわいく愛されるぬいぐるみを生み出しているのです。

どうしたらぬいぐるみパタンナーになれるの?


進路は特に限定されていませんが、絵を描く工程や生地を縫う工程があるため、絵や裁縫に興味を持ち、勉強しておくこともひとつの方法です。ぬいぐるみやもの作りへの「好き」という気持ちも大切です。

協力/吉徳

取材・文/鈴木ゆう子