地球儀製造職人
学校の授業で使うこともある地球儀。地球儀には、国別に地図が色分けされた「行政型」と、山脈や海の深さ、海流など地形の特徴が記載された「地勢型」があるのを知っているかな? みんなの近くに地球儀があったら、どちらか見てみてね。地球儀を一つひとつ丁寧に作っている人たちが、地球儀製造職人だよ。(写真提供/渡辺教具製作所)
平面の地図を、慎重に丸い球体に貼りつける
地球儀の製造方法には、職人による手貼りと機械生産があり、一般的に流通している地球儀の多くは機械生産です。
手貼りと機械生産では、使う材料や貼り付ける地図の形が異なります。手貼りの場合、地球儀の本体は、耐久性にすぐれたプラスチックでできています。まず、半球のフチを半周分だけマジックで塗ってから、2つの半球を重ねて球体にします。マジックで塗った部分が北半球と南半球を分ける赤道の位置になるのです。
次に、球体に地図を貼るための目安となる線引き(マーキング)をします。マーキングが終わったら、細長い舟のような形をした地図をハサミで切り取り、1枚ずつ貼り付けます。手作業で地図を切り取る理由は、球体によって大きさが微妙に違っているのを、職人の技術で修正するためです。地図を貼り終わったら、台座などのパーツを取り付け完成です。
手貼りの地球儀に貼り付ける、舟形(ふながた)の細長い地図
機械生産の芯材(地球儀の芯となる厚紙)をローラーに通して糊をつけているところ。この厚紙に花びら型の地図を重ねる
機械生産において、芯材と花びら型の地図をプレス機で半球にしているところ
中でも難しく集中力が必要なのが、丸い球体に平面の地図を貼る作業。空気やゴミが入らないようにしながら、地図がずれないよう慎重に貼ります。大変な集中力を必要とするため、午前か午後のどちらかのみ行います。1個の地球儀を作るのに1時間30分ほどかかり、1人の職人が1日あたり平均2個生産しています。生産数は少ないものの、手貼りの地球儀には、地図の誤差が少なくなることや耐久性が高いなどの良さがあるのです。
一方、機械生産の場合、手貼りの地図とは異なる花びら型の地図を使います。地図と同じ形の芯材に糊(のり)をつけて、花びら型の地図を互い違いになるように重ねます。プレス機で加熱しながら圧力を加えることで半球にしていきます。手作業で北半球と南半球を合わせて完成。機械生産でもその日の温度や湿度によって機械を調整するので、製造するには職人の経験が必要です。
地球温暖化など環境の変化も地球儀に反映させます。具体的には、年々小さくなっている中央アジアのアラル海の大きさを見直す、ウクライナの首都を「キエフ」から「キーウ」に変更するなどがあります。「自分たちが暮らす国は地球の中でどこにあるのか」「ニュースに出てくる国はどこにあるのか」など、地球儀を通じて人の世界を広げられる、やりがいのある仕事です。
どうしたら地球儀製造職人になれるの?
工作やコツコツとした作業が好きな人、根気強く物事に取り組める人が向いています。地球儀を製造するメーカーに就職し、地球儀製造のさまざまな作業を通して、技術を身につけていきます。