信号機に登っているあの人、何してる?

2024.04.08 あのひと何してる?

信号機を設置している人の画像

信号工事従事者

信号が正しく点灯・点滅するのは、「交通信号制御機」と呼ばれる機器で点灯時間や順番を管理しているからだよ。この制御機の点検や信号機の設置などを行うのが信号工事従事者の仕事だ。信号機がどのように建てられて管理されているのか紹介していくよ。(写真提供=中村電設株式会社)

信号機を誤りなく作動させて交通の安全を守る


信号機を設置する工事は、地面に穴を掘り、そこに柱を建てて信号灯器(青、黄、赤などのレンズが付いている部分)や制御機を取り付け、架空線をつなぎ、動きを確認するという流れで進みます。工事は4~5人のチームで行い、1つの交差点に3日程度かけて信号機を設置します。


穴を掘って柱を建てる方法は地域によって異なり、例えば千葉県が採用している「根入(ねいれ)方式」は、縦横70㎝・深さ60cmの四角い穴や柱の根元が入る1mの丸い穴を、スコップを使って手作業で掘ります。この方法だと、柱の全長の6分の1以上が地面の下にあることになります。

信号機を設置している人が使っている道具の画像

柱に取り付けられた制御機などの配線作業で使う道具類

信号機の配線工事をしている人の画像

高所での作業なので工事従事者の安全管理も万全に行う

歩道の上に信号機を建てることが多い市街地の工事では、穴を掘る前にアスファルトなどをはがす工程も加わります。地中にある水道管やガス管などを損傷しないように、事前に調査をするのはもちろん、慎重に掘り進めます。


柱を建てたら、高さや向きに注意して信号灯器を取り付けて架空線をつなぎます。特に注意が必要な工程が配線作業です。1カ所でもミスがあると正しく点灯しないので、制御機の中などの配線は慎重に行います。作業終了後、信号灯器が定められた色と順序で点灯するか確認したら、設置完了です。


信号機の保守・点検も大切な作業です。点検のタイミングは地域ごとに定められており、例えば千葉県は、制御機の動作や柱の状態、信号灯器の向きなどの点検を年に1回行います。このほか、古くなった信号制御機を交換する作業もあります。


災害対応にも力を入れています。停電時に備えて発電機を装備したり、バッテリーを内蔵した制御機を増やすのはその一例です。業者と地域の警察が協力して災害対応を行うケースもあります。


信号機の役割は、歩行者や自動車の安全を守ること。そのため、作業中に信号機を消灯することは基本的にありません。信号灯を補修する時は、交通誘導員が周囲の状況を確認して、支障のないタイミングで実施します。安全に配慮をしながらの作業は大変ではありますが、自分たちが手がけた交差点が地図に掲載されるなど、人の記憶に残ることが信号工事従事者の仕事の醍醐味(だいごみ)でもあります。


信号制御機がAI化されたり、自動運転が主流になっても、道路を使う人と自動車がある限り、信号は必要です。

どうしたら信号工事従事者になれるの?


信号機の工事を行う会社に入社して経験を積みます。交通工学や電気・通信・土木、小型移動式クレーンや高所作業車の操作など、さまざまな知識や資格を身に着けながら技術を磨いていきます。

協力/中村電設株式会社

取材・文/伊藤恵子