金属(きんぞく)3Dプリンターのエンジニア (*AMエンジニア)
写真の機械は、金属3Dプリンターだ。金属3Dプリンターは、金属の粉末などを素材に、3次元(3D)の立体を作ることができるんだ。エンジニアが作った設計プログラムは機械に送られ、モニターで作業の様子を確認しているよ。これまでの工法では不可能だった超複雑な構造の部品を作れるから、身近な機器から航空宇宙分野にも活用されているんだって。(写真提供/東金属産業株式会社)
*AMとは:『Additive Manufacturing』(付加製造法)で、材料を積み重ねて層にしていくことで、さまざまな形状の製品を作る手法のこと。一般的に3Dプリンティングの総称
金属3Dプリンターで、ものづくりの可能性を広げる
硬い金属を部品の形に加工するには、切ったり削ったりする切削(せっさく)加工や、金属と金属をつなげる溶接加工、溶かした金属を型に流し込んで作る鋳造加工など、いろいろな工法があります。しかし金属3Dプリンターの出現で、いままでの工法ではできなかった複雑な構造のものづくりが可能になってきています。
金属3Dプリンターによる試作。「こうしたらもう少し性能が上がるのに」と思いつつあきらめていた構造を実現し、より高性能の有機的な部品作りが可能になった
作業は、エンジニアがパソコンで3Dの*CAD設計図を作成することから始まります。モデルとなる部品のデータを作成・編集し、造形を成り立たせるための角度や補助構造(サポート材とも。完成したら取り除かれる)を検討します。それらが決定したら3Dプリンターにデータを送り込み、造形をスタートさせます。
金属の層を積み重ねる方法はいくつかあります。例えばパウダーヘッド方式では、細かな金属の粉を敷きつめ、レーザーを照射して金属を焼き固めていきます。造形マシンに入れて数時間で出来上がる部品もあれば、200時間かかるものもありますが、いったん造形が始まると人手は不要です。部品の造形が終わったらマシンから取り出してサポート部分を取り除くなどの仕上げ加工をし、エンジニアが計測や評価を行って、品質を確かめます。
*CADとは:コンピューターで立体の設計や作図を行うための支援ソフト。(Computer Aided Designの略)
パウダーヘッド方式で作った金属加工部品。周囲の砂のようなものは、素材となった金属の粉。レーザーが上から照射され、積層されていく
プリンティングが終わって、まだサポートがついた状態。AMエンジニアは、部品の軽量化や強さを要求されることが多く、構造設計を工夫することで性能を向上させている
片手サイズから、クレーンを使って取り出すほど大きく重いものまで、さまざまな部品の構造を考え、造形のための設計データを作るエンジニア。例えば人工衛星や飛行機・自動車・オートバイ・レースカーの部品、携帯電話・テレビなど身近な機器の部品も作ります。
金属3Dプリンターで商品を量産するのは、世界でもまだ10社程度。AMエンジニアの多くはモデル(試作品)作りに活躍しています。製作する部品の完成イメージ、3Dプリンタ―工法上の制限を意識したデータ作成が求められ、ときには部品の依頼者であるクライアントに、モデル変更を提案できる能力も必要です。
どうしたら金属3Dプリンターのエンジニアになれるの?
さまざまな分野の部品を作るので、金属に関する知識、各業界で使われる部品の知識、CADの技量も必要です。探究心や、広い視野で柔軟に考える力をつけていきましょう。