しごとについての質問
仕事場にカメラが入っても「これは企業秘密です」って映さないこともある。仕事に秘密があるの?
児玉ひろ美(こだま ひろみ)さん
*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団
多くの時間とお金をかけた工夫は、財産として守るため、秘密にしています
『そこが知りたい! 発明と特許 ①発明・特許ってなんだろう?』
著者:こどもくらぶ/編
出版社:筑摩書房
価格:3080円(税込)
仕事現場を密着取材するテレビ番組は、私もよく見ます。その企業の製品の魅力をたっぷり紹介し、作り方を説明したところで、肝心の部分が「企業秘密です」となり、がっかりしたり、悔しくなったりしますね。
では、見たかった「企業秘密」って、何でしょう? おそらく、「誰もが考えなかった驚きの○○」「不可能を可能にした○○」「夢のような○○」といったものでしょう。○○は、工夫・発明・開発などが当てはまるでしょうか。
『そこが知りたい! 発明と特許 ①発明・特許ってなんだろう?』には、○○に当てはまる、それまでなかった、新しい工夫を「企業秘密」にする理由が丁寧に説明されています。
表紙を開くと、ビニール傘に始まり、カップめんや針ナシのホチキス、温水洗浄便座、LED、家庭用ゲーム機など、身近な製品発明の秘密や秘話がたくさん出てきます。日本で発明され、今では当たり前のように使っているものばかりです。どの発明の背景にも、多くの時間とお金をかけ、苦労を重ねた発明者の努力があることがわかります。
こうした発明を、財産として守ろうという法律が「特許法」です。「特許法」については、大人も知らなかったようなことが、わかりやすい言葉で写真と共に説明されています。
シリーズには『そこが知りたい! 発明と特許 ②きみにもなれるよ、発明家!」もあります。
会社を作って億万長者になった男の子の物語では、アイデアを公表
『歯みがきつくって億万長者』
著者:ジーン・メリル
訳:岡本さゆり
絵:平野恵理子
出版社:偕成社
価格:1430円(税込)
では、発明って「企業秘密」にしないといけないのでしょうか?
『歯みがきつくって億万長者』の主人公ルーファスは、ひらめいたアイデアを形にできる器用な⒓歳の男の子。お母さんに頼まれた買い物がきっかけで、歯みがきの値段に疑問を抱きます。「このチューブの中に何が入っているんだ。ただのペーストにミントの匂いがついているだけじゃないか!」と早速手作り。友人のケイトと協力して売り出し、あっという間に億万長者になります。ところが彼は、そのアイデアを一切秘密にせず、公表します。
「でもそれって、物語の中のことでしょう?」と思われるかもしれませんね。
本書では、歯みがきの原材料の計算から、販売するための費用、もうけの計算、株式、広告など、商売をするための知識や社会との付き合い方を、小学生2人の視線を通してきちんと知ることができ、アメリカでは1972年の出版以来、長く読み続けられています。
この本を読むと、自分で何かを作って販売してみたくなりますが、何より、学校での勉強が社会生活でこんなふうに役立つのか! と知ることもできますよ。