絵馬師(えまし)
絵馬とは、神社やお寺に奉納する木製のお札のこと。お札の裏には、願い事や感謝の気持ちを書くんだって。絵馬の起源は、今から1000年以上も前の飛鳥時代や奈良時代。神様に生きた馬を奉納する風習があり、やがて馬の代わりに板に馬を描く絵馬が登場したと言われているよ。写真は、絵馬師がアトリエで絵馬を描いている様子。普通の絵と、どう違うのかな。(写真提供/絵馬師 永崎ひまるさん)
木の札に絵を描き、絵馬の文化を後世に残す
絵馬は、神社やお寺の一角に奉納されている小さい絵馬のほか、大きいサイズの大絵馬もあります。大絵馬は、神社の舞殿(まいどの。神社の境内にある、舞楽を行うための建物。神楽殿=かぐらでん)などに飾られ、美術的な価値も非常に高いとされています。
毎日の習慣として、神棚へのご奉仕、氏神様へのお参りなどを心がけている。古事記や暦といった知識の勉強も欠かさない
大絵馬は大型の木札に直接筆で描く。「この絵は神様や仏様の元へ行くのだ」と思いながら、尊い気持ちで絵と向き合う
絵馬師へ仕事を依頼するのは、基本的には神社やお寺です。とはいえ最近では、空港や大きな駅といった観光客の多い場所で目にすることも増えてきました。絵馬が多く奉納される時期はお正月で、依頼されるのはその半年くらい前から。神社やお寺は神聖な空間なので、打ち合わせをするときはカジュアルな服装は避け、清い心で接し、失礼のないように配慮します。密なコミュニケーションをはかって信頼関係を築き、イメージと違和感なく仕上げることが重要です。
まずは、神社やお寺の雰囲気、欲しいイメージなどを詳しく聞いて図柄を考えます。最近の傾向で若者向けのポップな図柄も増えてきましたが、あくまで厳かな雰囲気を大切に、オリジナル性が強すぎるもの、土地柄でタブーとされるものは避けるようにしています。
十二支、七福神、日の出、鳳凰(ほうおう)、富士山など、図柄が決まったら、木札に印刷するための元絵を手描きやCGで描きます。神様や仏様の姿は実際には見えないので、想像の中で描かなくてはいけないのがこの仕事の難しさです。
絵が印刷された絵馬は、神社やお寺ですべてお祓(はら)いとご祈祷(きとう)を行い、神様や仏様の魂を宿した聖なるものとなります。1人でも多くの人に絵馬が授与され、大切に扱ってほしいと願う絵馬師。絵を描くだけでなく、絵馬の文化を広め後世に残す使命も担っています。
どうしたら絵馬師になれるの?
「こうしたら絵馬師になれる」という、一般的な道筋はありません。絵馬や御守(おまもり)を製造する会社のデザイナーになるほか、絵馬師の弟子となるなどが考えられます。神道や仏教の心得、知識などを勉強しておくとよいでしょう。