大学教授って、研究するのと学生に教えるのと、どっちがホントの仕事?

2022.07.31 おしごとBOOK

しごとについての質問

「大学教授って、研究するのと学生に教えるのと、どっちがホントの仕事なの?」(17歳・男子)

児玉ひろ美(こだま ひろみ)さん

公立図書館司書とJPIC*読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本 選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)等があり、雑誌やWEB等でも連載中。

*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団

学問を究めることと後進を育てることは、縦糸と横糸の織りなす布


『大人になるっておもしろい?』

著者:清水真砂子

出版社:岩波書店(岩波ジュニア新書)

価格:968円(税込)

最初に結論からお伝えしてしまうのですが、大学教授の主要な仕事は、研究活動と学生への教育、この両方なのです。


研究活動とは、自分が専門とするテーマを、研究(実験や調査・分析)し、研究成果を論文にまとめ、定期的に学会や学会誌などで発表します。


学生への教育は、自分が担当する授業のカリキュラムを考え、講義や演習を通して専門知識を学生に伝えたり、ゼミなどで学生が論文を書くための指導を行ったりします。つまり、専門とする学問を究め、後進を育てるのが大学教授の仕事なのです。


『大人になるっておもしろい?』の著者・清水真砂子さんは、児童文学者で翻訳家。高校教師を経て短期大学の教授(現在は名誉教授)となられた方です。本書は清水さんが大学で出会った10代の終わりの学生たちが「個性」や「らしさ」を探る一方で、「人と違うこと」「一人でいること」「悩むこと」「怒ること」を避けることに驚き、手紙のようにつづったメッセージです。


目次には、第1信「『かわいい」を疑ってみない? 」、第2信 「怒れ!怒れ!怒れ!」、第3信 「ひとりでいるっていけないこと?」と第13信まであり、清水さんの専門である児童文学(物語)を紹介しながら、学生に話しかけます。一つひとつを読み進めていくと、学問を究めることと後進を育てることは決して無縁のことではなく、縦糸と横糸が織りなす布のように、この世界を作り上げていくのだと感じられます。巻末には紹介された物語のリストがあります。

学者の視点から考えた学生へのメッセージは、人生の選択の大きなヒントに


『友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える』

著者:菅野 仁

出版社:筑摩書房(ちくまプリマー新書)

価格:814円(税込)

清水さんの「ひとりでいるっていけないこと?」の問いに関心をよせた方も多いことでしょう。


『友だち幻想』には、第1章「人は一人では生きられない?」、第2章「幸せも苦しみも他者がもたらす」、第3章「共同性の幻想―なぜ『友だち』のことで悩みは尽きないのか」とあります。


著者は、日本、アメリカ、中国、韓国を対象にした『高校生の意欲に関する調査』から、日本の高校生は「友人重視思考」の傾向が突出している反面、いじめや引きこもりが社会問題として長い間注目を浴びていることに違和感を得ます。


友だちが大切、でも友だちとの関係を重苦しく感じてしまう。そうした矛盾意識を解きほぐして考え直すために、これまで当たり前に考えていた「人と人とのつながり」の常識を根本から見直したタイトルが「友だち幻想」なのでした。


文学者と社会学者が研究者の視点から考えた学生(後進)へのメッセージは、これからの人生の選択に大きなヒントとなることでしょう。