輸入バナナを調べているあのひと、何してる?

2022.03.07 あのひと何してる?

植物防疫官(しょくぶつぼうえきかん)

植物防疫所は、植物に有害な病害虫(病気や害虫)が広がることを防ぐため、輸出入される植物や国内の一部の地域から移動する植物を検査する機関だ。全国の空港や港にある56カ所で、約1000人の植物防疫官が働いているよ。写真は、港の倉庫でフィリピン産の未成熟(緑色)バナナに病害虫が付着していないかを検査している様子。病害虫が侵入すると、その国の農産物に思いもよらない大きな被害を与えることがあるんだって。(写真提供/農林水産省 神戸植物防疫所 )

病害虫の被害から日本の農業と緑を守る


植物防疫官の主な仕事は次の4つです。

・輸入検疫……日本にいない病害虫が外国から侵入しないよう、外国から輸入される植物を検査する。量の多少や商売用・個人用の用途を問わず、貨物、手荷物、郵便物で輸入されるすべての植物が対象。輸出国が日本と約束したルールが守られているかどうか、輸出国へ行って確認することもある。
・輸出検疫……日本の病害虫が外国に広がらないよう、日本から輸出される植物に相手国が指定する病害虫が付着していないかを検査する。
・国内検疫……日本の一部の地域のみに発生している病害虫が日本中に広がらないよう、特定の植物を検査する。
・調査研究……世界中から最新の情報を集めて、検査・分析・消毒などの技術を開発する。


検疫をするのは、苗、球根、種、野菜、果物、切り花、木材、穀類、豆類、飼料など広範囲です。害虫は、葉の裏や枝と枝のすき間、果物や野菜であれば表面のくぼみや内部、切り花では蕾(つぼみ)の中、苗などは根から見つけ出します。


1㎜にも満たない微細な害虫もいるため、肉眼だけでなく顕微鏡も使います。苗や種はそのまま栽培されることから、さらに検査が必要です。果物の苗木の中には、隔離された施設で1年以上かけて栽培して、病気の発生の有無を調べたり、PCR検査で遺伝子診断をすることもあります。


種は少量を病気が発生しやすい環境に数日間おいた後で、病原菌の有無を検査したり、PCR検査を行います。


病害虫が発見されたものは“不合格”となり、くん蒸、殺菌、選別などが適切に実施されれば輸入できます。

ケニアから航空貨物で輸入されたバラの切り花を空港内の植物防疫所の検査場で検査

輸入検査で見つかった病害虫を顕微鏡で確認

植物防疫所の検査室でPCR検査

フィリピンからの旅行者の手荷物で、輸入を禁止しているグアバ(バンジロウ)という果物5個から、日本の果物に大きな被害をあたえるミカンコミバエなどの害虫が505匹も見つかったことも

海外から荷物が入ってくる港や空港とその周辺には、害虫を捕獲するわなを仕掛けたり、昆虫採集や植物の観察を行ったりして、万一侵入した場合は、すぐに根絶するための調査や駆除を行っています。

どうしたら植物防疫官になれるの?


国家公務員試験に合格し、農林水産省の植物防疫所職員に採用されることが必要です。研修を受けて1年以上仕事を経験した後、内部試験に合格すると植物防疫官になれます。

協力/農林水産省 神戸植物防疫所

取材・文/内藤綾子