コロナ禍で思ったこと。働くって身体はもちろん、精神的にも大変じゃないですか?

2021.10.15 おしごと映画

しごとについての質問

「コロナ禍で思ったのですが、働くって身体はもちろん、精神的にも大変じゃないですか?」(16歳・女子)

中山治美(なかやま はるみ)さん 

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

皆、生きることに必死です。でもちょっとだけでも未来を明るいものにできたら……


『人と仕事』

監督:森ガキ侑大

出演:有村架純、志尊淳

2021年10月8日(金)より全国3週間限定劇場公開

©2021『人と仕事』製作委員会

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

監督:フレデリック・ワイズマン

デジタル配信中/ブルーレイ&DVD発売中

ブルーレイ:7480円(税込) DVD:6380円(税込)

発売・販売元:ポニーキャニオン

©2017 EX LIBRIS Films LLC - All Rights Reserved

その質問に答えてくれる、ピッタリの映画があります。有村架純×志尊淳出演のドキュメンタリー映画『人と仕事』です。2人が役者ではなく、ひとりの人間として、コロナ禍の影響を受けた人たちと向かい合い、実態をうかがいます。


飲食店が閉店したり、時短営業となったために野菜の卸し先がなくなったしまった農家。密や濃厚接触なしでの仕事はありえない保育士や介護士、看護師の葛藤。さらに仕事をなくしてしまった=収入ゼロになってしまった人もいます。やむなく友人たちとの共同生活を営むことになった若者や、いわゆる“夜の街”で働くことを選択したシングルマザーも登場します。中には夢を断念せざるを得なくなった人もいて、その姿を見るのは非常につらいものがあります。かくいう有村と志尊も、当初は別の映画を撮る予定が撮影中止に。その同じスタッフと組んで本作を制作することになったという経緯があります。


今回の行政によるコロナ対策は、社会に大きな分断を生んだと言われています。休業要請を出された飲食店や映画や演劇などのエンターテインメント業界は、あたかも“不要不急”の仕事のような印象を与えました。さらに繰り返し警鐘を鳴らされた“夜の街”で働く人たちは、あたかも非合法な仕事をしているかのようなあつかいです。でも彼らにも生活があります。皆、生きることに必死です。世の中に、不要不急な仕事なんてないのでは? 本作を見ると、そんな思いを抱くと思います。


今、都心を歩くと目立つのは、空き店舗の多さです。そこで働いていた人の人生は? コロナ禍の影響は今後さらに表れてくると思います。そもそもコロナ感染もまだ収束していません。質問の答えとして、精神的に不安な日々は、まだ続きそうです。だからと言って、手をこまねいて見ているのは悔しくないですか? 今回私たちが体感したことを教訓に、ちょっとだけでも未来を明るいものにできたら……。


そこで、ぜひあなたに見ていただきたいドキュメンタリー映画があります。『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』です。え? 本を借りる場所を見て、何を学ぶの? と思いましたか? 本作を見ると図書館の概念をきっと覆されると思います。


低所得者へのWi-Fiの無料貸し出しから、聴覚・視覚障がい者向けの音声図書や点字図書の提供、子どもたちへの教育に、求人募集をする企業・団体と就職希望者の仲介まで。日本だったら本来、市区町村の役所が担っているような業務まで行っているのです。


彼らは“図書館とは広く公に開かれた場所であり、地域の人々の暮らしになくてはならない存在である”という理念を強く持っています。同図書館もコロナ感染拡大中は休館を余儀なくされたそうですが、Wi-Fiの無料貸し出しによって、行政の各種補償手続きをオンラインでできたことは、利用者の生活を支えることに大いに役立ったことでしょう。また日本同様コロナ禍で多くの人が職を失ったことから、就職支援活動をオンラインで行っていたそうです。


情報弱者や低所得者層など、社会から取りこぼされる人がいないよう教育と文化で支えるこの取り組み。有事に備えるには、日頃の積み重ねがいかに重要か。本作には、未来へのヒントがたくさんありそうです。