国土地理院 くにかぜ撮影士(こくどちりいん くにかぜさつえいし)
国土地理院は、土地の測量や地図の作成などを行う、日本で唯一の国家地図作成機関だ。書籍やスマートフォンなどで目にする日本全国の地図は、国土地理院が作る地図が基になっているよ。地域のハザードマップや、民間企業の観光マップ・地図アプリなどにも利用されているんだって。写真は、測量用航空機「くにかぜⅢ」に乗って地上を撮影している様子。普通の撮影とどう違うのかな?(写真提供/国土交通省 国土地理院)
地図を作るために国土を撮影。写真は国の財産に
国土地理院が作成する地図は「基本図」と呼ばれ、日本の形状・地形・地名・交通(道路、鉄道など)・建物などの情報がわかる、あらゆる地図の基礎になっています。撮影士は、国土地理院が保有する測量用航空機「くにかぜⅢ」に搭乗し、基本図を作るために上空から日本全国の写真を余すところなく撮影しています。
くにかぜⅢの全景。くにかぜ撮影チームは、昭和35(1960)年の初代「くにかぜ」就航以来、60年以上にわたり日本全国を撮影している
くにかぜⅢには約2億画素の測量用デジタルカメラが搭載され、高度2350mから撮影して8キロ平方メートルほどの範囲を1枚の写真に収めます。高度は2000~5000mほどで、高度を維持したまま同じ速度を保ちながら直線飛行し、できるだけ機体が傾かないようにして真下を撮影。隣接する写真が、重なり合うように撮影することがポイントです。重複部分では地表面を立体的に見ることができ、地図作成に必要な高さ(標高)の情報を得ます。
中央にある四角い機材が、真上から垂直撮影できる約2億画素の測量用デジタルカメラ。事前に撮影計画を登録しておき、シャッターが自動で切られる。撮影士が画像を確認中
天候に左右されやすいのが、この仕事の難しさです。地上の表面を鮮明に撮影するために、撮影士は、雲や強い光などの障害が映り込まないかモニターで常に監視します。特に離島では雲が発生しやすく、雲が切れるタイミングに合わせて撮影します。上空の風が強い日は、ジェットコースターのように機体が大きく揺れる中で、高い撮影技術が求められます。1回のフライトは2~4時間ですが、6時間ほどかかることもあります。
大規模な災害が発生したときも、被災地を直ちに緊急撮影します。被災状況がひと目で分かる空中写真は被災前と後を比較することにより、復旧・復興のための基礎資料づくりに役立てられます。
国土の状況は、大規模な地震による地殻変動や火山噴火といった自然現象によりダイナミックに変化する場合と、開発などにより道路や建物ができるといった、人間の活動により変化する場合があります。撮影した写真は国土の変遷を記録した、後世まで残る貴重な財産です。
どうしたら国土地理院のくにかぜ撮影士になれるの?
国家公務員試験を受けて、国土地理院の職員になることが必要です。研修などを受けて測量に必要な資格を取得すると撮影士になることができます。