水先人(みずさきにん)
日本の海は、貨物船、クルーズ船、漁船といった大小さまざまな船が走っているね。特に港の周りは船が集中して混雑するため、安全に出入りすることが難しいんだ。そこで、辺りの海のことをよく知る専門家のアドバイスが必要なんだって。その役割を果たしているのが水先人だよ。水先人が乗らないと、事故は何倍にも増えるという調査報告もあるんだ。(写真提供/日本水先人会連合会)
船が安全に走れるようにサポート。船長に信頼される存在
水先人は、港の形や航路などの情報を把握し、船長に針路やスピードを指示して、安全に航行できるように案内するのが仕事です。
東京湾の水先人は、交代で1日約60人が約100隻の船を案内しています。大型のクルーズ船やタンカー、自動車専用船、天然ガスを運ぶLNG船など、船の種類はさまざまです。
船会社から依頼を受けると、水先人は水先艇と呼ばれるボートに乗船して、案内をする船と港の沖合で合流し、船から下ろされたパイロットラダー(縄ばしご)を登って、海へ転落しないように注意しながら乗り込みます。船に乗り込んだら、船長から船の性能など案内に必要な情報を聞き、船長には、港の状況や航行計画をアドバイスします。
航行中の動いている船に乗り込む水先人
風雨や潮流などの自然条件が変わる中、他の船舶との衝突を避けるため適切な針路やスピードを船長にアドバイスする
海上では航路を走る船が優先ですが、他の船が航路を横断してくることや急接近して衝突しそうになることも。それらの船と無線で交信して対応しますが、ヒヤヒヤすることもあります。
着岸は、船体を岸壁に衝突させないように、指定の位置へ正確に着けなくてはいけません。船にはブレーキがないので、速度を落としながら毎秒数㎝の速さで船を移動させるため、高度な技術が必要で、とても神経を使います。
案内をする船の多くは外国船で、船の乗組員にとって最初に会う日本人は水先人です。そのため、スーツに帽子を着用し、「おもてなし」の気持ちを持って乗船します。仕事は英語で行いますが、英語の通じない国の船員にはジェスチャーなども使って、コミュニケーションをとります。
自然の変化などに的確に対応し、無事着岸できたとき、船長から「Good job(よくやった)!」と感謝されると、水先人は、このうえない達成感に満たされます。
どうしたら水先人になれるの?
三級海技士(航海)以上の免許を取得し、船長や航海士等の経験を一定期間積んで、水先教育センターという学校で所定の課程を修了したのち、水先人の国家資格を取得します。