自給自足で暮らしてみたい。私にもできる?

2021.08.30 おしごとBOOK

しごとについての質問

「自給自足で暮らしてみたい。私にもできるんでしょうか?」(17歳・女子)

児玉ひろ美(こだま ひろみ)さん

公立図書館司書とJPIC*読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本 選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)等があり、雑誌やWEB等でも連載中。

*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団

水や明かりまで自分でまかなうイメージでしょうか?


『長い冬』

著者:ローラ・インガルス・ワイルダー

訳:谷口 由美子

出版社:岩波書店

価格:880円(税込)

17歳の女性が考える自給自足って、どんなイメージでしょうか? 水や明かりまで自分でまかなう? それとも お金を得るためだけの労働はせず、時間に縛られず、自分が必要とする物はできるだけ自分で作り、自分の心身を満足させる暮らし、でしょうか?


ドラマ『大草原の小さな家』あるいは『ローラ物語』で知られる、女性の半生を描いた物語シリーズの1冊『長い冬』をご紹介しましょう。本書は主人公ローラにとって、特につらい冬を描いた作品です。


今から約150年ほど前、米国北部の大きな森に、若い両親と幼い娘たちメアリー・ローラ・キャリーの家族5人が丸太小屋に住んでいました。周囲には家もなく、出会うのは野生の動物ばかり。父親は農業や狩りをして、母親は洗濯・炊事のほかにバターやチーズを作り、家族は互いに敬意と愛情をもって自給自足の暮らしをしていました。


ある年、父親は尋常ではない冬の訪れを予感し、家族は急いで大草原から町の家に移り、冬に備えます。ところが、町も氷点下40度の猛吹雪に襲われ、食料や燃料の補給が途絶えます。一家はどんなふうに冬を耐え抜くのでしょう? 大自然の中で培った自給自足の知恵は、町の緊急事態に生かせるのでしょうか?

自給自足の生活をしながら現代社会とつながっている例もあります


『世界のともだち01 ルーマニア アナ・マリアの手づくり生活』

著者:長倉洋海

出版社:偕成社

価格:1980円(税込)

そんなことを考えていたら、『世界のともだち01 ルーマニア アナ・マリアの手づくり生活』に登場するひとりの少女の顔も浮かんできました。名前はアナ・マリア。ルーマニアの北西部にあるネグリア村に暮らす12歳の少女です。


ネグリア村は人口526人(出版当時:2013年)の小さな村です。村のほとんどが農家で、牛を飼ったり、パンを焼いたり自給自足の生活を営んでいます。アナ・マリアは農家の両親と兄2人、妹の6人家族。親戚もみんな近所で暮らしています。家族は1950年代におじいちゃんが建てた家に、お父さんが手を加えて暮らしています。ほとんどの食べ物を家族で協力して作り、肉類も店で買うことはありません。


でも、パンを焼く小麦は近くの店で、お菓子や日用品は、お父さんが乳製品を売りに行く町で買い、家族はインターネットやDVDを楽しんだりもしています。アナ・マリアの暮らしを伝える本書には、家の中・一日の暮らし・学校での様子、町街へ買い物に行く様子、村の伝統行事、世界遺産、インターネットなど、自給自足の生活をしながら現代社会とつながるためのバランスを考えるヒントがたくさんあります。