牛のおしりに腕を入れているあのひと、何してる?

2021.07.30 あのひと何してる?

家畜臨床獣医師(かちくりんしょうじゅういし)

みんながいつも食べている牛や豚は、農場で育っているよ。動物たちの病気やけがの治療、予防をしているのが家畜臨床獣医師だ。写真は酪農家の農場を回り、乳牛の定期健診をしているところだよ。神経質そうな牛は一目見てわかるから、蹴られないように気をつけているんだって。(写真提供/NOSAIオホーツク)

家畜の治療や予防をし、農家の生活を支える


家畜臨床獣医師の仕事は、馬や牛、豚などの家畜の健康を守ることです。上の写真を提供してくれたNOSAIは「農業共済」といって、全国各地にあり、農家の売り上げを安定させるために、家畜の病気の予防や繁殖に力を入れています。農家が保険に加入することで、保険適用の治療や手術、検査を行っているのです。


家畜臨床獣医師の診察は、地域によって動物が変わります。北海道・北見家畜診療所は乳牛・肉牛・馬・豚が診察の対象で、所属する20名の獣医師が約3万3000頭の家畜と、約160戸の酪農家を担当しています(2021年6月現在)。北見家畜診療所で診察するのは、ほとんどが牛です。


乳牛は妊娠して分娩(ぶんべん、出産)すると牛乳を搾れるようになります。メスの子牛は生後14カ月前後から授精し、24カ月前後で初めての分娩を迎えます。それからはほぼ毎年分娩し、たくさんの牛乳を搾れるようになります。中にはなかなか妊娠しない牛や、産後2年以上経っても次の妊娠をしない牛がいます。このような牛たちは、どういう餌を食べているのか、飼育環境などを丁寧に診察します。

牛の乳汁細菌検査をしている様子

農家からの依頼で多いのは、「牛が餌を食べない」「立てない」「乳房炎になった」「子牛が風邪をひいた」など。治療はもちろん、農家と一緒に原因を探り、病気にならないような飼い方を考えていきます。病気の治療以上に、農場ごとにどうやったらより生産性を上げられるかを一緒に考えて、協力して課題を解決することにやりがいを感じます。

往診で手術が必要と診断するとトラックを手配して牛を診療所に運び込む。診療所には2台の手術台があり、日に6〜7頭の手術を行う

どうしたら家畜臨床獣医師になれるの?


獣医師になるには、大学の獣医学科(6年制)を卒業し、獣医師国家試験に合格する必要があります。なかには社会人を経験してから大学受験をし、50代で獣医師になる人もいるので、年齢は関係ありません。大学での学びに加え、就職してからもさらに専門的な知識や技術を勉強し習得していきます。

協力/ NOSAIオホーツク

取材・文/片岡由衣