しごとについての質問
「朝起きるのが苦手でも大丈夫な仕事ってありますか?」(12歳・女子)
児玉ひろ美(こだま ひろみ)さん
*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団
大人になっても、「朝、起きられないかも…」とか思うものです
『やまのかいしゃ』
著者:スズキ コージ
絵:かたやま けん
出版社:福音館書店(1991年に架空社から出版)
価格:1650円(税込)
その気持ち、よーくわかります。勉強することや働くことが、嫌なわけではないけれど、毎朝、毎朝、決まった時間に必ず起きなければならない。しかもそれが、何年も何十年も続く。想像しただけで、不安になったり、憂鬱(ゆううつ)になったりしますね。もしかして、大人になれば、誰もが自然にできるようになるのかしら? いえいえ、残念ながら大人になっても、「朝、起きられないかも……」とか、「その日起きた時間で、自由に仕事ができればいいな……」など、ちょくちょく思うものです。
『やまのかいしゃ』の主人公、会社員のほげたさんは朝起きるのが苦手です。今日も昼過ぎになってから、慌てて家を飛び出しました。駅に向かいながら身支度を済ませ、すぐに来た電車に飛び乗りましたが、ほげたさんの足にはトイレのスリッパ。手にはカバンもなく、いつもの眼鏡もかけていません。おまけに電車は会社とは反対方向へ……。
ほげたさん、会社員として、かなり不安な感じです。やがて、電車は終点やまのあなた駅に到着し、ここでほげたさんが一言。「こうなったら、きょうは、やまのかいしゃへいこう」。そのとたん、ほげたさんの顔つきも、歩く姿も変わります。
この絵本は30年前に出版され、しばらく品切れでしが、2018年に出版社を替え再版されました。絵本に詳しい大人たちは「ほげたさんこそ、社会の常識に風穴を開ける人!」と、再販を喜びました。
暮らしを見つめる「家庭科」教師の本をご紹介しましょう
『正しいパンツのたたみ方』
著者:南野忠晴
出版社:岩波書店
価格:946円(税込)
もう一冊ご紹介するのは『正しいパンツのたたみ方』。「朝起きることと、パンツのたたみ方にどう関係があるの?」と、思われたことでしょう。著者は「家庭科」には、生徒が自ら暮らしを整える力を育てるだけでなく、周囲の人とともに、社会の中で生きる力を育てる要素もあると実感し、英語教師から、教員採用試験をわざわざ再受験して大阪府立高校初の男性家庭科教師となった経歴の持ち主。
そう、家庭科が普段の暮らしを見つめ、この社会で生きることの具体的な知恵と技術を身につけることを最大の目的とするのなら、そこに朝起きられる知恵と技術もありそうだと思えてきませんか? ところで、タイトルの「正しいパンツのたたみ方」が気になりまね。それは読んでのお楽しみにしておきましょう。