しごとについての質問
「早く仕事がしたい。社会に出たら、もう勉強しなくていいんだよね?」(14歳・男子)
中山治美(なかやま はるみ)さん
義務教育を終えれば、その後の選択はあなたの自由。ただ、勉強には人生を変えるチャンスがあります
『幸せのちから』
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ウィル・スミス、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス
発売・販売:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
価格:Blu-ray 2,619円(税込)/DVD 1,551円(税込)
『学校』
監督:山田洋次
出演:西田敏行、竹下景子、萩原聖人、中江有里、裕木奈江、渥美清、田中邦衛
発売元・販売元:松竹
価格:4180円(税込)
©1993松竹株式会社/日本テレビ放送網株式会社/住友商事株式会社
早く社会人になりたいとは、なんと労働意欲に燃えた方なのでしょう。でももし「勉強をしたくない」という“逃げ”の手段だとしたら、ちょっと待った!
確かに、義務教育を終えれば、その後の選択はあなたの自由です。ただ、実は社会人になってからの方が「勉強しなければ」という思いにかられる場面が確実に増えます。なぜなら、勉強することで人生を変えるチャンスがあることを知るからです。そう聞くと、ちょっと学ぶことに意欲が湧いてきませんか?
映画『幸せのちから』のクリスの例を見てみましょう。クリスは家族を支えるため、全財産をはたいて新型医療機器を仕入れて、その商品を販売する仕事をしていました。しかし思い通りには売れず、生活は困窮。妻とのけんかも絶えなくなります。
クリスは考えました。幸せになるためには、どんな方法があるのだろうか?と。そんな時に目にしたのが、高級車に乗って颯爽(さっそう)と出社する男性の姿です。彼は、クライアントに代わって株の売買をする株式仲買人でした。しかもその仕事に学歴は関係ないと言います。クリスは早速、証券会社が行っていた養成コースの門をたたき、研修プログラムに参加することになります。そこから、彼の人生が大きく変わっていくというストーリーです。
クリスにはモデルがいます。実際に一時はどん底生活を味わったものの、株式仲買人となったことで億万長者となり、実業家、そして今は作家や慈善活動家として活躍している米国在住のクリス・ガードナーです。
社会に出ると今までより世界が広がった分、「もっと知りたい」と思うことが確実に増えます。自分の給与から引かれる税金がどのように使われているのか、社会の仕組みを知りたいと思うようになるかもしれませんし、政治家に不信を抱いて「日本の選挙制度はどうなっているんだ!?」と疑問を抱くかも。そしてこれは、“大人あるある”なのですが、海外へ行った時に「もっと学生時代にちゃんと英語を学んでおけばよかった」と後悔することもしばしば。そう、実は学校時代の勉強は基礎の基礎で、社会に出てから応用編が待ち受けています。つまり人生って、一生勉強が必要なんですね。
それを実感させてくれる映画をご紹介しましょう。山田洋次監督の映画『学校』です。
舞台は、公立中学校の夜間教室です。ここには戦後の混乱期に義務教育を修了できなかった人、何らかの事情で母国の義務教育を受けられずに日本で暮らすことになった外国籍の人、さらに不登校だった若者たちもいます。授業内容は日本語の基礎知識かもしれませんが、焼き肉店を営む在日コリアンのオモニや、読み書きができなかったというイノさんが懸命に机に向かい新たな知識を得ようとする姿は、「学ぶ」ことに年齢制限はないのだということを感じさせてくれます。
しかも彼らが学ぶのは、教科書から得る知識だけではありません。ここは小さな教室ですが、社会には様々な人が暮らし、支え合って生きていることを学んでいきます。わかっているけど、忘れがちなんですよね、これって。
繰り返しますが、義務教育後の勉強は自由意思です。自分が将来どうなりたいかを思い描いて、選択してください。