手足を使って泥をかき混ぜているあのひと、何してる?

2021.03.30 あのひと何してる?

地域自然環境保全員(ちいきしぜんかんきょうほぜんいん)

みんなは富士山や神奈川県の鎌倉市など、豊かな自然や歴史を感じる場所へ遊びに行ったことがあるかな。そこには地域の自然環境を調べて守っている人たちがいるんだ。写真は、沖縄県の竹富島。国の重要文化財になっている「旧与那国家住宅」の瓦屋根に使う土づくりをしているところ(屋根を組んだ上に土を塗り、その上に瓦を敷きつめる)。土と藁(わら)を混ぜ込むと、しっかり瓦を固定してくれる質の良い土ができるんだって。先人の知恵だね。(写真提供/竹富島地域自然資産財団)

地域の自然環境を調査し、土地に合った方法で守る


美しい景色を楽しめる場所には、たくさんの人がやってきます。観光客が来るのはうれしいことですが、一方でごみが増える、もともとその地域にいなかった生き物(外来種)が入り込み生態系が乱れる、美しい景観が開発によって変わっていくなどの問題も増えています。そこで「地域自然資産法」*という法律に基づき、地域の状況に合わせて、自然環境や伝統的な景観を守り再生するのが地域自然環境保全員の仕事です。



神様の場所とされる、御嶽(うたき)の森を覆っていた外来種バラアサガオを駆除

壊れたグック(石積みの壁)の積み直しをして、美しい景観を取り戻す

例えば竹富島では、海岸に漂着したごみの清掃や、元々島にいた植物を守るために、外来植物のバラアサガオ、ギンネム、アメリカハマグルマなどの駆除をしています。集落を守るための防風林が減少していることがわかると、フクギの苗の植樹をします。今ではあまり作られなくなったお祭りのお供え用の野菜を育てたり、伝統的な自然素材で家の修復に関わったり、使われなくなったカー(井戸)の調査をしたりすることもあります。


作業報酬は決して多くはありませんが、地域の人とコミュニケーションを取り、昔の生活や風景に思いをはせながら活動しています。


「地域自然資産法」*とは
地域の人たちと行政が協力し、地域にとって重要な自然の保護活動を自発的に行えるようにできた法律。入域料や寄付で資金を集め、自然環境や歴史的建造物を守っていく「自然環境トラスト活動」も行う

どうしたら地域自然環境保全員になれるの?


その土地が好きで、自然環境や文化を守りたいという気持ちがあれば、他に職業を持ちながら空いた時間に参加できます。資格や学歴などの条件はありませんが、専門知識を深めていると現場で役立ちます。

協力/一般財団法人竹富島地域自然資産財団

取材・文/片岡由衣