企業の顧問弁護士(きぎょうのこもんべんごし)
高度な法律の知識を武器に、人々の権利や利益を守る「弁護士」。離婚や相続などの個人トラブルを解決する弁護士がいる一方、会社や従業員のトラブルを解決する「企業の顧問弁護士」もいるんだ。写真は、企業経営者向けセミナーで、法律の改正について講義をしている様子だよ。どのように企業に貢献しているのか、調べてみよう。(写真提供/弁護士法人咲くやこの花法律事務所)
企業をよく知り、裁判になる前にトラブルを解決
事務所内で法律や判例の調査をする
最近は、情報不足からトラブルにならないように、法律を守って正しい経営をしたいという意識の高い会社が増えています。そこで、企業の顧問弁護士は、具体的に次のようなことをサポートしています。
・契約書の作成やチェック
・労働環境の改善や従業員とのトラブルの解決
・企業が受けたクレームについて相談を受け、解決する
・不良品が出た場合の対応、お金を支払わない取引先からの代金の回収、ルールを守らない取引先との交渉
・新規事業についての相談
・社内不祥事が発生したときの対応
など。労務関係、知的財産、債権回収、CSR(企業の社会的責任)、個人情報保護などさまざまな分野があり、専門分野を持つ顧問弁護士も多いです。ひとりで50社ほどを担当し、トラブルにすぐ対応できるように、その日の仕事は当日中に終わらせることを心がけています。
弁護士というと、裁判のイメージがあるかもしれません。裁判になると費用や労力の負担が大きく、解決までの時間もかかり、企業にとってマイナス要素が甚大です。そのため、裁判になる前にトラブルの解決を目指し、従業員との話し合いの場に同席したり、取引先との交渉を行ったりしています。経営者や従業員に対し、トラブル予防の基礎知識や法改正の内容を教えるセミナーを開くこともあります。
裁判となれば企業の立場に立って適切な解決を目指す
企業の相談は、法律を調べれば解決策が得られるといった単純なものではありません。顧問弁護士には、物事を論理的にとらえ、状況によって臨機応変に判断する対応力が求められます。解決のために粘り強く企業から話を聞き、調査やデータ収集をしながら、なによりも頼りになるのは正義と向き合う信念です。
どうしたら企業の顧問弁護士になれるの?
大学の法学部に進学し、大学卒業後に法科大学院(ロースクール)に2~3年通学したのち、司法試験を受験する人が多いです。合格後、国の研修制度(司法修習)を経て弁護士資格を取得し、企業法務の仕事を手がける法律事務所に5~10年勤務することが一般的です。