海洋土木工事技術者(かいようどぼくこうじぎじゅつしゃ)
道路や建築現場などの工事はよく見るけれど、海の上や海の中で工事をすることもあるんだ。これを海洋土木工事というよ。海の安全を支え、発展を促すために造り上げた建造物は後世まで形に残り、地図に載る。日本は海に囲まれた海洋立国だから、海洋土木工事は重要でスケールの大きい仕事だ。海の中で、どんな仕事をしているんだろう?(写真提供/コスモ海洋株式会社)
海上、海中、海底を舞台に、港や橋などを建設する
水中溶接作業
海洋土木工事技術者は、防波堤、橋、港湾施設、海中トンネル、人工島といった海に関わる建設工事を行います。
海中の写真は、技術者が潜水して電気の熱を利用して鋼管を溶断している様子。海洋土木工事の代表的な作業で、港湾施設や橋げたなどの修理や補強などを行う際の、海中溶接・切断作業です。海中なので、潮流の方向や強さに影響され手元が安定しづらく、さらに海水が濁っていると視界が暗く手探りになることがあり、経験と熟練が必要とされます。海洋土木工事は、風が強く、波が高いと仕事ができません。「あと1日で仕事が終わる」というときでも海が荒れれば、1~2週間延びることもあります。そのため、ひとつのプロジェクトは、短くて1~3カ月、長い場合は10年くらいかかることがあります。
浚渫船と呼ばれる工事用の船で、浚渫工事をする
また、年々大型化するタンカーや旅客船が安全に航行できる水深があるかどうかを確認するために、海の測量もしています。浅ければ、浚渫工事(しゅんせつこうじ)といって船の安全な航路を作るために海底の土砂を掘る作業も行っています。
日本の海には、戦争から75年以上が経った現在でも、まれに不発弾(機雷・砲弾など)が見つかることがあります。そのため、浚渫工事前に「磁気・潜水探査」といった、不発弾の有無を調査することも重要な仕事です。
自然を相手にしていると、日々刻々と状況は変化します。それだけに、危険を予知し対策をした上でひとつずつクリアしながら完結した仕事には、味わった者しか経験できない達成感があるのです。
どうしたら海洋土木技術者になれるの?
専門用語が多いので、工学系、水産系の高校や大学で海洋学などを学ぶと有利。海洋土木会社に就職後、仕事を覚えながら、潜水士、アーク溶接作業者、ガス溶接技能者などの国家資格を取得する人が多いです。