しごとについての質問
「虫が大好き。虫と関わるには、どんな職業に就けばいいんでしょうか?」(16歳・男子)
児玉ひろ美(こだまひろみ)さん
*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団
「生かす仕事」と「直結した仕事」があるようです
『丸山宗利・じゅえき太郎の昆虫手帳』
著者:丸山宗利
絵:じゅえき太郎
出版社:実業之日本社
価格:1300円(税別)
もしかして、虫が大好きなあなたは昆虫図鑑もお好きなのでは?
以前、昆虫好きの司書仲間が「昆虫図鑑は、昆虫の機能的で完成度の高い美しさが正確に描かれていることが大切」と教えてくれました。こんなふうに好きなことを仕事に生かす方法は、いろいろとあります。
WEBで虫・仕事などのキーワード検索をすると、思いのほか多様な仕事が見つかります。ただしそれらは、製薬会社での防虫剤開発であったり、昆虫採集用品や飼育用品の販売であったりします。検疫、環境アセスメントといった仕事は、農林・地理・土木・環境など、専門分野の修学も必要です。
あなたのご希望は、虫が好きなことを生かす仕事ではなく、虫に直結した仕事かと思われます。もし学問として昆虫を極めたいなら、大学教員・研究者という選択肢もあります。
『丸山宗利・じゅえき太郎の昆虫手帳』は、SNSアカウント「ゆるふわ昆虫図鑑」で人気のイラストレーターじゅえき太郎さんの漫画でストーリーが展開。主人公の太郎が拾った手帳の中身は1月から12月まで、虫に関わるメモでぎっしり。それもそのはず、持ち主は昆虫学者の丸山宗利先生。手帳には先生の仕事の予定や段取りなども書き込まれていて、観察や調査以外の研究者の仕事の一端を知ることができます。日記には、観察した昆虫、飼育中のスズムシやクワガタなどの様子が、研究者の視線でイラストとともにつづられています。なかには、新築のご自宅で発見したゴキブリまで観察・記録してあり、そこにはこんなコメントが……。「わたしたちの潔癖は行き過ぎていて、自分も生き物だということを忘れがちです」
小さな生き物と共にある職業といえば農業
『田んぼの生き物―百姓仕事がつくるフィールドガイド』
著者:飯田市美術博物館
出版社:築地書館
価格:2000円(税別)
自分も生き物ということを忘れがちな私たちは、他の生き物に大変な影響を与えています。
『田んぼの生き物―百姓仕事がつくるフィールドガイド』は、農業生産者の日々の作業を通して、水田環境の変化の中で暮らす生き物たち247種類を、季節ごとにカメラに収めまとめたもの。小さな生き物を守ることは、私たち自身の生き方につながることだと、随所に収められた生産者のコラムが理解を促し、虫に関わる職業の可能性を大きく広げてくれます。