しごとについての質問
「警察官や消防署員は命令や規則がいっぱいあって大変じゃないのかな?」(12歳・女子)
中山治美(なかやまはるみ)さん
“大変”を通り越して責任の重い仕事です
『踊る大捜査線THE MOVIE』
監督:本広克行
出演:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里
フジテレビジョン/ポニーキャニオン
Blu-ray&DVD発売中
©1999フジテレビジョン
『バックドラフト』
監督:ロン・ハワード
出演:カート・ラッセル、ウィリアム・ボールドウィン
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格:4K Ultra HD+ブルーレイ 5990円(税別)Blu-ray 1886 円(税別)/DVD 1429 円(税別)
なるほど! 人によって “大変そう”と思うポイントって違うのですね。
筆者の場合、警察官や消防士が大変だなと思うのは、火事や事件が起こったら最前線で対応しなければならないこと。まさに命懸けで職務を全うしなければなりません。 それだけに、任務に就くまでの道のりも険しいようです。
例えば地域の警察署や交番に勤務している “お巡りさん”になるには、各都道府県が行っている警察官採用試験をパスした後に警察学校へ行きます。消防士も公務員採用試験合格後に、各自治体の消防学校で初任教育を受ける義務があります。
つまりこれらの職業を目指す人は、確固たる意思を持って臨んでいるワケで、端から見れば大変そうと思う規律も、“当然”と受け止めているかもしれません。
では、具体的にどんな規則や命令があるのか見てみましょう。
警察官のことなら「踊る大捜査線」シリーズは外せません。
それまで警察モノといえば、犯人逮捕のためなら派手なカーチェイスも銃撃戦もお構いナシというアクションが主体でした。しかし本作は、警察官の日常業務を限りなく盛り込んでいます。警察官は通称“法の執行人”とも呼ばれていて、どんな権限を与えられているのかは、「警察官職務執行法」という法律で具体的に定められています。武器の使用範囲も厳しく決められていて、同シリーズでは携帯にも手続きが必要というシーンが登場。ドラマ「西部警察」で育った世代にはなかなかの衝撃でした。
『踊る大捜査線THE MOVIE』では警視庁副総監誘拐事件という警察全体を揺るがす事件が勃発する一方で、湾岸署内で騒動となるのが領収書盗難事件。警察官とて交通費など捜査にかかった必要経費は自分で申告書を作成しなければなりません。その重要な領収書が盗まれたとなれば、自腹となってしまうわけですから一大事です。折しも警察署では経費削減が叫ばれており……。警察署は私たちの税金で運営されていて、警察官もれっきとした公務員。警察組織という縦社会の中で描かれる彼らの悲哀は、一般社会と何ら変わらないようです。
消防士映画の傑作『バックドラフト』は、消防士だった亡父の跡を継いで、消防士になった兄弟が連続放火殺人事件の真相を追う物語です。火事シーンのリアルさもあって、消防士がいかに尊い仕事をしているかがよく分かります。
彼らが重要視しているのがチームワーク。素早く鎮火するため、単独行動で危険な目に遭ったら救いようがないため、自分たちの命を守るためでもあります。短髪が規則なのも、髪への引火を防ぐためなのです。
消防士にもまた各自治体に「消防職員服務規程」が存在し、そこには次のような一文が必ず書かれています。「職員は、常に職員の誇りと責任をもって勤務するものとし、勤務時間外においても職員としての自覚をもって行動しなければならない」(大阪市消防局例規集)。
私たちが警察官や消防士に無類の信頼を抱くのは、そこに規程にのっとって任務に就いてくれているのだという安心感があるからではないでしょうか?
規則や命令は私たちの行動を縛りつけるという悪いイメージもありますが、誰もが安心して社会生活を営めるように必要なルールなのでしょう。