大きな会社では、やりたいことと違う仕事もやるの?

2020.02.28 おしごと映画

しごとについての質問

「大きな会社に入ると、やりたい仕事と違うことをやらされることもあるって本当?」(15歳・男子)

中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

本当です。大きな組織では、各部署の力を結集したチームプレーが重要


『決算!忠臣蔵』

脚本・監督:中村義洋

出演:堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、荒川良々、妻夫木聡

5月2日(土)Blu-ray &DVD発売

発売元・販売元:株式会社ハピネット

©2019 「決算!忠臣蔵」製作委員会

『沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組)』

監督:若松節朗

出演:渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二

発売元:KADOKAWA 角川書店

販売元:東宝

価格:4200円(税別)

よく社員は「大きな組織の歯車の一つである」と表現されますが、それによって企業は大きな事業を動かしています。


たとえば食品会社が新入社員を採用して、全員を希望どおりの広報に配属したらどうなります? 
売り物である商品がなければ成立しない仕事ですので、組織のバランスがくずれてしまいます。


そこで会社には人事部があり、社員の希望を聞きつつ、経歴や能力、会社の現状を総合的に判断しながら適材適所に配属しています。
 

組織において各部署の力を結集したチームプレーがいかに重要か。そのことを再認識させてくれる作品を紹介しましょう。


『決算!忠臣蔵』です。はっ? 時代劇?と思ったでしょ。ここはひとつ、藩を1つの大きな組織だと考えてみてください。


ごぞんじ忠臣蔵は、江戸時代に起きた不公平な裁きで主君の赤穂藩主・浅野内匠頭(たくみのかみ)が切腹させられた恨みを晴らすべく、大石内蔵助(くらのすけ)ら赤穂四十七士が幕府の重臣・吉良上野介(きら こうずけのすけ)邸に討ち入りした赤穂事件を元に創作された作品です。


脚色された部分もありますが、赤穂事件は史実であり、武器調達にいくらかかったのか?などを記した「預置候金銀請払帳」という記録が残されています。その史料を東京大学史料編纂所(へんさんじょ)教授・山本博文先生がまとめた『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書)を原作に、中村義洋監督がお金の観点から『決算!忠臣蔵』を生み出しました。


注目は現代の経理担当にあたる、勘定方(かんじょうかた)です。スポットライトが当たるのは赤穂浪士ばかりです。しかし彼ら勘定方の功績なしには討ち入りどころか、今も愛される忠臣蔵という作品は誕生しなかったでしょう。


大きな会社では、残念ながら業績の悪化や社内のややこしい人間関係に巻き込まれ、本人の望まない人事異動“左遷”も存在します。


渡辺謙主演の映画『沈まぬ太陽』を見てみましょう。


原作は、丹念に取材した事件や史実から着想を得て、壮大な社会派人間ドラマを描き出した作家・山崎豊子の同名小説です。


舞台は、飛行機事故を起こした国民航空会社。多くの犠牲者を出したのは、巨大企業の慢心と労働者をないがしろにする組織体制にあったのではないか?という問題点を、恩地元という主人公を通して描いていきます。
 

真面目で信望も厚い恩地は、労働組合の委員長に任命されます。労働条件の改善を会社代表と交渉する大役です。傲慢(ごうまん)な経営陣にとっては厄介な存在で、ストを強行したことから経営陣の目の敵に。よって恩地は海外を転々と赴任させられます。


こんな会社、とっとと辞めたらいいじゃん!と思うでしょう。しかし憧れて入った会社。労働組合で共に戦った仲間もいます。何より飛行機事故の犠牲者のためにも、同じ過ちを繰り返してはならないという責務もあります。彼は会社を立て直すべく奮闘します。


好きなことのみに突き進むのもいいですが、人間って慣れてしまうと成長しない生き物でもあります。恩地を見ていると、望まない仕事や逆境というハードルを乗り越える度に人間力が増していくんですよねぇ。「若い時の苦労は買ってでもしろ」ですね。