栽培漁業の種苗生産技師(さいばいぎょぎょうのしゅびょうせいさんぎし)
人の手で育てた魚の子ども(種苗)を海へ放流して、自然の海で大きく育ったところを漁師が取ることを栽培漁業というよ。写真は、北海道の日本海海域で、ヒラメの子どもを放流している様子だ。「そんなことをしなくても、海には魚がたくさんいるのに」と思ったかな? 実は魚や貝は思った以上に不足しているんだ。その問題に取り組むのが種苗生産技師だよ。(写真提供/北海道栽培漁業振興公社)
魚を育てて増やし、豊かな海づくりに貢献
親魚に卵を産ませている様子
ヒラメを放流するため、トラックに積み込む作業
近年、魚を取り過ぎる、海の環境汚染が進むといった理由で、十分な魚や貝が取れなくなっています。そのため、種苗生産技師が魚や貝を他の生き物に食べられにくくなる大きさまで育てて、海へ放流したり、欲しい地域に提供したりすることで、魚や貝の数を増やしているのです。
対象とするのは、①おいしくて人気がある、②高価、③以前ほどたくさん取れなくなった魚や貝で、例えば北海道ではマツカワ(ヒラメに匹敵する高価なカレイ類)、ニシン、ヒラメ、マナマコ、クロソイ、ハタハタ、エゾアワビなどです。
栽培漁業には、次のような段階があります。
・種苗生産……親魚から卵を産ませ、水槽で育てます。稚魚には1日に数回エサを与え、底に沈むフンや食べ残ったエサをキレイに掃除し、病気の発生に気を配り健康状態を毎日確認します。
・中間育成……ある程度成長したら、海へ放流しても自力で生きていけるように、海に近い環境にした「いけす」などに移して育てます。
・種苗放流……大きく成長したら、海藻のたくさん生える海域や干潟など、エサとなる生物がたくさんいて成長しやすい海域へ放流します。トラックで運ぶときや船から放流するときの扱いで、急激に衰弱したり、死んだりすることもあります。運搬中は水温を上げないように氷を入れたり、十分な酸素を供給したり、放流するときは体を傷つけないよう丁寧に扱います。
どうしたら種苗生産技師になれるの?
生き物に興味関心のある人が適任と思いますが、就職したい方は全国の栽培漁業センターなどの施設へ問い合わせをしてみてください。