海上で多国籍の人とチームを組むあのひと、何してる?

2020.02.03 あのひと何してる?

石油・天然ガスの掘削(くっさく)エンジニア

石油や天然ガスは、自動車や暖房機器、コンロなどの燃料として、また電気をつくるため、生活になくてはならないものだね。そんなエネルギー資源は地下深くに眠っているから、採取するために井戸を掘らなくてはいけないんだ。その作業を「掘削」というよ。遠い国で外国人とチームを組み、地下を掘り進めて資源を利用できる形にするのが掘削エンジニアだ。(写真提供/国際石油開発帝石株式会社)

100億円かけて穴を掘り、石油や天然ガスを採取する


円筒鋼管で堀った穴が崩れないように枠を作る

海上リグまでは、毎日定期的に数便飛行しているヘリコプターで移動

 

掘削エンジニアは、掘削に必要な予算や工程などの計画を立て、機材を準備し、作業を管理しながら井戸を掘るのが仕事です。日本は石油や天然ガスの資源に乏しいため、掘削現場は海外がほとんど。東南アジア、ヨーロッパ、中東、北米、南米、豪州など世界各地の陸上だけでなく、北海、中東、アメリカのメキシコ湾など、海底油田・ガス田の掘削も盛んに行われています。

井戸は、浅くて地下2000m、深いもので1万mを超えるほど深く掘ります。6000mを掘るのにかかる年月は、24時間休みなしで働いても丸1年以上かかる場合も。一度その国に駐在すると4~5年はプロジェクトに従事し、複数の井戸を計画・掘削します。

地下深くまで掘り進むための、大きなやぐらやポンプ、パイプやドリルなどの設備・機械をまとめて「リグ」と呼びます。一基のリグに、さまざまな国籍の掘削エンジニアが乗っているため、コミュニケーションをとるには相手の文化的背景を考慮しなければいけません。中東では、海上リグにもモスク(礼拝堂)が常設されており、イスラム教の人たちは1日5回、決まった時間にお祈りを捧げます。ミーティングを中断してお祈りに出かける人もいます。

100名以上の乗組員と多様なコミュニケーションをはかりながら、一本の井戸を掘り進める費用は、数10億~100億円! それほど巨額な費用をかけても、最初の数本では原油や天然ガスを見つけられず、最後の井戸で大きなガス田を発見したことも。地下という目に見えない大自然と向き合い、ひたすら穴を掘る、これほどロマンあふれる仕事はありません。

どうしたら掘削エンジニアになれるの?


工学、理学、地球科学など理系の大学を卒業して、石油開発会社などに就職するのが一般的です。掘削について専門的に勉強するのは、会社に就職してからという人が多いです。

協力/国際石油開発帝石株式会社

取材・文/内藤綾子