特殊高所技術者(とくしゅこうしょぎじゅつしゃ)
建設現場の高所で作業をする場合、重機を使用したり足場を組んだりするのが一般的だ。しかし、重機や足場を使わないのが特殊高所技術の特徴。写真では、山頂に設置された風力発電機のブレード(羽根)の点検を行っているよ。「高所恐怖症には無理」と思ったかな? 恐怖心があると安全行動を怠らないから、高所が苦手な人の方が向いているんだって。(写真提供/株式会社特殊高所技術)
風力発電機の先端やダムの上で、点検・調査・補修をする
洋上風力発電機のメンテナンス
橋の点検
特殊高所技術とは、高強度のロープやハーネス(安全ベルト)で体を支え、近寄ることが困難な場所へ安全に近づいて調査や補修を行う技術です。特殊高所技術者は、橋、風力発電機、水力発電施設、崖・道路の法面(のりめん=切り土や盛り土によってできる人工的な斜面)といった急斜面や高所で、作業を行っています。作業結果はデータおよび写真にまとめて報告書を作成し、依頼者に提出。依頼者は、国土交通省、地方自治体、電力会社、高速道路会社などです。
仕事現場は、2m以上ある木の上から300mくらいの鉄塔まで、さまざまな高所。夜間はもちろん、猛暑、落石、時間制限がある場合は過酷です。高さもさることながら、世界最大級の洋上風力発電機という巨大な現場もあります。高さ100m以上ある風車のタワーにはハシゴや昇降機を使い数分で到着します。そこから、長さ40m程度のブレードの翼根から翼端までロープを使って移動し、ドローンや双眼鏡では見えない、小さな損傷を早期に発見。その場で補修をするほか、点検結果によっては依頼者が大規模補修を判断し、事故防止につなげます。
作業中は、常にロープに体が保持されているため、上空で体勢を崩しても墜落することはありません。とはいえ、ロープを設置する落下防止柵がない現場が多いため、常にハーネス型安全帯を2丁掛け仕様で使用して墜落防止を徹底。日ごろから、同僚がトラブルに巻き込まれたときのレスキュー訓練も行い、万全を期しています。
作業は危険を伴いますが、誰も行けない場所で、技術を駆使して公益の設備を支える、まさに縁の下の力持ちです。
どうしたら特殊高所技術者になれるの?
高校程度を卒業し、特殊高所技術を扱う会社へ就職します。土木や構造物、電気、環境などに興味関心があるとよいでしょう。