アフリカンプリントのバッグをシングルマザーたちと共に製造、販売

2020.02.03 わたしのしごと道

[社会起業家(RICCI EVERYDAY共同創業者兼代表取締役COO)]仲本千津(なかもと ちづ)さん

静岡生まれ。早稲田大学法学部卒業。2009年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。卒業後、大手都市銀行に就職。11年に農業支援を手がけるNGO団体に入り、14年からウガンダ事務所駐在として農業支援に携わる。15年ウガンダの首都カンパラで現地の女性を働き手としたバッグの工房を立ち上げ、アフリカの布を使ったトラベルバッグを東京・代官山のショップやWEBサイトで販売している。

アフリカのウガンダで工房を立ちあげ、バッグを製造・販売されています。詳しく仕事の流れを教えてください。


カラフルで、独創的なアフリカンプリントの生地を使った「RICCI EVERYDAY(リッチー エブリデイ)」のバッグ。フェアトレード(発展途上国の製品を公正な価格で取引し、現地の人々の経済的・社会的な自立を支援する活動)の製品でWEBサイトから購入できる

カラフルで遊び心にあふれたアフリカの生地を使ったバッグや、トラベルアイテムを中心に企画から製造、販売を行っています。大量生産ではなく一つひとつ手作りにこだわっていることが特徴で、お客様と作り手との距離を縮めようというブランドです。アフリカンプリントの生地をガーナの工場やウガンダのマーケットで買い付け、ウガンダの工房でバッグに縫製して日本で販売しています。バッグのデザインは私がしています。


工房には20人くらいのウガンダ人が働いていますが、男性は2人だけであとは女性。ウガンダではシングルマザーや、子どものころ兵士にさせられていた人たちは、高等教育を受けることができず、定期収入を得られる仕事に就くことが難しいんです。そういう社会的に疎外されている人たちを積極的に雇用するようにしています。

「社会起業家」というのは、聞き慣れない言葉ですが、普通の起業家と社会起業家の違いはどういう点でしょうか?


ウガンダの工房で働く現地の女性たち。「ウガンダで女性が仕事を持つことは、自己肯定感を高めることにつながります。今は20人くらいの小さな組織ですが、これを今後どんどん大きくしていけばいいんだろうな、という見通しを持っています」(写真提供:仲本さん)

起業家は利益を追求しながら事業を回していきますが、社会起業家は事業を回しながら、同時に社会的課題も解決することを目標においている点が違います。うちの場合だと、社会から疎外され、生きづらさを感じている現地の人を積極的に雇用し、彼女たちが自立的に人生を歩むことができるようサポートしたり、素材調達をなるべく環境負荷のないものにしたりしています。


ウガンダには昔ながらの一夫多妻制や、男尊女卑の考え方があり、特に農村地域では女性が前に出て積極的に発言することがありません。でも仕事を通じて、マインドセット(先入観・思考パターン)は変えられることに気付いたんです。工房で働いている人たちは、女性一人で子どもを育てながら家族をサポートしたり、私がいなくても一人ひとりがオーナーシップをもって仕事に取り組んだりしてくれるようになりました。変化がどんどん見られるようになって、「仕事は人を変えていく」ということを強く感じています。


ですから私が目指しているのは、ただの雇用とは違います。仕事だけを提供するなら業務委託で「カゴを100個、200個発注して、数に応じてお金を支払う」という形でもいいのですが、それではきちんと生活を支えているとはいえません。高い技術を提供し、マインドセットを変えるチャンスを提供する面も含めての雇用だと思っています。

大学で法律を、大学院で政治を学んでいらっしゃいますが、なぜその学部を選ばれたのでしょうか? アフリカで起業することにつながったことはありますか?


「緒方貞子さんは今もあこがれです。あの時代の日本女性で、国際開発の現場で政策を作る立場にいた人はなかなかいません。また仕事と自身のプライベートを両立するという生き方があると、勇気を持たせてくれた存在です」

高校の世界史の授業で、国連難民高等弁務官だった緒方貞子さんのドキュメンタリー番組を見る機会があって、緒方さんの仕事に興味を持ちました。将来的に国際機関で働きたいと思い、大学の法学部で国際関係法を専攻しました。


大学院では国際政治を専攻し、ユーゴスラビア紛争など民族紛争そのものの成り立ちや、紛争解決、停戦後の平和構築に興味がありました。冷戦終了以降、1990年代にサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南の地域)で内戦が頻発して。自然と興味がアフリカに移っていきました。そこで学んだ基本的な知識は今につながっています。


卒業後に銀行に勤めたのも、起業するために一般企業での社会人経験を積みたかったからです。「アフリカの貧困をなくさなくては」と青臭いことを言っても、「実際にどうやるの」となると、現実社会のことを全く知らないと事を起こすことはできません。いったん社会に出て、社会の構造を理解してから、30歳までにアフリカで起業しようと考えていました。

ウガンダと日本では、いろいろな慣習が違うと思いますが、現地の人を雇用するときにどんなことを心がけていますか?


「ウガンダに滞在しているときは、毎朝一人ひとりにあいさつをします。ちょっと表情がこわばっていたりしたら、何かあったのかなと声をかけたり、任せた仕事の進み具合を聞いたりして。積極的なコミュニケーションを心がけています」(写真提供:仲本さん)

歴史的にウガンダはイギリスが旧宗主国だったのですが、実際はインド人が支配していて、今でも経済の中心はインド人。管理職クラスはインド系に占められ、昇級やポジションチェンジの機会がなく、ウガンダ人は自分の意見を言うこともできません。そんな環境の中で働かされていているのは問題だと感じ、まずは彼女たちが自信を持って一人のプロフェッショナルとして働くことのできる環境を作ることから始めました。


彼女たちに何かお願いをすると、モジモジしたり、後ずさりしたり不安になったりします。でも私はそんなことを気にせずドンと任せて、その成果に対して「今度はこうしてみよう」と新しい提案をしていきます。間違っても、失敗してもいいのです。まずは試してみるチャンスを提供するのが大事。会社側もリスクをとりつつ、彼女たちに「不安はあるけれど、一歩踏み出す勇気を持ちましょう」という働きかけをして任せる場を増やすようにしています。

日本人が外国で仕事をするときに、現地の人が「期限を守らない」など、価値観の違いからくるエピソードをよく聞きますが、そういうトラブルはありますか?


並べてあるだけでパッと明るい雰囲気になるアフリカンプリントの生地。「『自分は半分ウガンダ人』という感覚がどこかにあって。もはや私は完全なる日本人でも、完全なるウガンダ人でもなく、『日本人ってそういうところあるよな~』なんて思うことも(笑)。第三者的な立場で世の中を観察している感覚で日々過ごしています」

1年の半分はウガンダ、半分は日本という感じで行ったり来たりしています。私がウガンダにいないときは、現地の人たちだけで工房を回しているのですが、「原材料がなかったから、生産ができなかった」ということがあって。「何で原材料がなかったことを報告しなかったのかな~」と(笑)。報告を受けていたら、その場で解決策を一緒に練られたのにと思うことが多々あります。


でもこちら側にも非はあり、きちんとタイムリーにフォローできなかったことが反省点。誰でも1回はミスします。ミスが起きるときはだいたい仕組みが悪いので、次にそうならないような仕組みを再考します。人を憎まず、仕組みを憎むという(笑)。資材調達の担当者が1人というのが問題点だと分かったので、2人に増やし、資材の在庫管理を行う仕組みを作り、対策を取りました。


価値観が全然違う人たちと仕事をするなかで、彼女たちには彼女たちのペースや考え方があるので、あまり怒ってもいいことはないと気付きました。自分基準のものさしで相手を見るから、カリカリしたりイライラしたりするんです。私のイライラは周りにも伝染して、スタッフが萎縮して仕事がはかどらなかったり、関係性が悪くなったりして、事業の目標や成長に寄与しません。つくづく「怒り」は無駄な感情だなって。それはウガンダに行ってから学んだことです。

小・中学生に、将来の職業を選択するときにどんなアドバイスをしますか?


「将来的には女性の生きづらさをなくすことに興味があります。日本の女性もウガンダの女性も生きづらさを感じているのは同じ。女性がいろんな選択肢の中から人生を選ぶとき、「世間体や親の目を気にしていない」「自分本位で選びとった」というように、自分のやりたいことや、なりたい姿になって、自由に生きられるといいなと思っています。自分の意思を貫くのは大変ですけどね」(写真提供:仲本さん)

目指す職業は何でもいいと思いますが、若いうちに多様性のある場所に身を置いてみることをおすすめしたいですね。海外の全然価値観の違う人たちと、何か一つのものを作り上げる経験を早いうちに積んで、最低でも英語が話せるようにしておきたい。コミュニケーションのツールとして言語は大前提です。できるなら中国語など2カ国語、3カ国語がしゃべれるようになるといいですね。


子どもが身近に多様性を感じる第一歩として、親も自分の価値観を子どもに押しつけない方がいいのかなと思います。例えば、何げなく「その服装はハデだからやめなさい」などと言ってしまうこともあるかと思いますが、「どうしてハデな服を選んだのか」「自分をどう見せたいのか」、その気持ちの方が大事です。


起業に興味がある子には、「起業は『社会に貢献したいと思う人が、満たされていないニーズを満たしにいくこと』なので、お金もうけだけが目的ではないよ」と伝えたいですね。「社会をよくするために会社を作る」「お客様(消費者)の生活が良くなる」というのは、日本の昔からの株式会社の概念ですから。あとは、資源は有限であることは変えられないので、次世代のことを考えながら、どのようにして持続的な事業を作っていくのかを念頭においてほしいと思います。

取材・文/米原晶子 写真/門間新弥